ジャッカルの日

世田谷の河童料理専門店「ジャッカル」店主の日記ブログ。

【特集】『所さんのまもるもせめるも』は真のタフな男になるための教科書だ【攻略】

 文学フリマに出品したレトロゲーム特集の同人誌『二級河川18 地獄・極楽懐ゲー攻め!』掲載原稿。原文はいわゆる「逆噴射文体」だったが、ここでは熱量抑え気味に普通の文体でお送りします。あと豊島と練馬を混同しているところがあったので直した。(二級河川18号は現在品切れ中)

 

 

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 「二級河川18」巻頭では有名人が出演したり作成に関わったりしている「タレントゲーム」について取り上げているが、おれは今回『所さんのまもるもせめるも』という男の中の男のゲームについて書くことにした。

 タレントゲームにはいい加減なものも少なくはないが、画像検索で出てきたスクショだのゲームカタログWikiだのを見てクソゲー草で終わらせてはもったいない。未プレイのゲームをクソ扱いするのは冥獄界級の大罪だ。プレイの上で自分がクソゲーと断じた物だけがクソゲーで、他人がいくらクソゲーと言おうとそれはクソゲーではない。クソゲーの荒野に存在するROADは、お前が歩んだ後ろに出来る血の獣道だけだ。わかったか。

 何が言いたいかというと、1987年にファミコンで発売された横スクロールアクションゲーム『所さんのまもるもせめるも』は一般的に言われているようなクソゲーではなく、個性的な世界観とグラフィック、適度な縛りが緊張感をもたらす基本システム、コツを覚えてしまえばラクに進める爽快さを兼ね備えたタフなゲームだということだ。むろん遊んだ上でクソゲーだと感じた人もそれなりにいるとは思うが、「ゲームカタログWiki」も事実と違う箇所や思い込みが大量にあるし、おれが同程度の思い込みとエゴで本作を賛美してもバチは当たらないだろう。


【物語とBGMと真の男について】

 ストーリーについて解説しよう。ある日、東京の千代田区でビジネスに励んでいた所さんのもとへ、まだ幼い愛娘「さやか」からテレパシーでSOSが届く。「助けて! ママがロボットみたいになっちゃったの!」と。ただごとではない。緊急事態であることを察した所さんは、その辺にあった水鉄砲をつかんで飛び出す。舞台となるのは東京23区がモチーフとなったステージだ。
 そんな所さんに襲い掛かるのは、かつてはスタッフや仕事仲間だったレプリカント…映画『ブレードランナー』で出てきた複製人間の群れだ。ブーチャン小林もいる。なぎら健壱もいる。よくわからないが一つ目のイモムシとか、ピョンピョン飛び跳ねる裸足の足だけとかもいる。自分以外がすべて敵という状況で、所さんは所沢にある邸宅を目指す(世田谷ではない)。時には汚水にまみれながら下水道を進み、時には高速道路でカーチェイスを繰り広げ、片手には頼りない武器を、胸には家族への愛のみを抱いて立ち向かうその姿。これがHERO、真の男で無くてなんだというのか。

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↑説明書より

 先のゲームカタログWikiには、本作の欠点として「BGMが電波。所さんが作曲したわりには出来もよろしくない」などと書かれている。メインとなる東京23区編のBGMは確かに独創的なメロディだが、「狂った母親に監禁された娘を救出するため、親しい友人らのまがいものの姿をした群れなす敵へと飛び込んでいく」という、混乱した状況に放り込まれた所さんの焦燥感・孤独感を100パーセント表現している素晴らしいBGMである(電波かと言われれば電波ではある)。

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 そもそもの話、このゲームの作曲は所さんではない。もちろん所さんはミュージシャンではあるし、ゲームオーバーになるとどう聴いても「ラヴ・イズ・オーヴァー」な曲が流れて「かなしいけれど おわりにしよう きりがないから」というメッセージが流れたりするのは確かに所さん的なおふざけに思えるが、本作における所さんの肩書は「トータルプロデュース・キャラクターデザイン」。サウンドも手掛けていたのなら、ソフトのウリとしてしっかりクレジットに表記されているはずである。実際のミュージックコンポーザーは、『くにおくん』シリーズなども手掛けた澤和雄氏という説もあるが、本作にはスタッフロールは無いし、説明書や攻略本等でも澤氏の名前は確認できない。ただ、少なくとも「作曲は所さん」とは書かれていない。


【『まもるもせめるも』はクソゲーではない】

 おれは『所さんのまもるもせめるも』をクソゲーではないと言ったが、それはもちろん先に挙げたものも含む幾つかの理由と直感によるものだ。
 キャラクターたち(こちらは正真正銘、所さんによるもの)は一見かわいらしく牧歌的でありながら、クールでアシッドな雰囲気を存分に漂わせている。アクションもユーモラスで、意外とシリアスでハードな状況のストーリーとのバランス感覚は特筆すべきだ。敵は行動パターンもなかなか個性的。後で述べる通り、基本的に避けゲーであるこのゲームにとっては、敵のグラフィックと動きが個性的で「パッと見で何をしてくるか判断できる」のは意外と重要な点だ。
 ステージも、おそらくは『スーパーマリオブラザーズ』を参考にしたのだろうが、23区編の地上(ビル街)、地下(下水道)、空(高速道路)、水上(港)という構成は東京っぽさを十分出せていると思う。郊外編に突入した時の「郊外すぎるだろ」感もギャグとして成立していて良い。

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 難易度に関しては「攻略本の事前情報があれば楽勝、なければかなり難しい」というアンバランスな面があることは確かだが、当時のファミコンゲームとしては普通の話である。とは言え、ガチガチの攻略情報は本作のクリアーまでには必要ない。おれが今から伝授するアドバイスを知っておけば、おまえも所さんと同様の世界まる見えワンマンアーミー、敵どもには死を、愛する者には慈悲をもたらす聖戦士となれるだろう。

 

 

【アドバイス1:弾は無駄撃ちしない】

 所さんの武器は水鉄砲だ。無限に撃てるが、残りの水ゲージの量が減ると飛距離が落ちていき、ゲージがゼロになると足元にポトポト落ちるだけになる。水鉄砲は唯一の攻撃手段なので、こうなるとすごくやばい。一見情けない武器だが、環境に文句を言うやつに晴れ舞台は一生来ない。水鉄砲が有限である以上、基本的に敵は避けて進むことになる。無駄な争いは避けるに限る。所さんはメキシコのカルテルマフィアでも殺人マリアッチでもない。
 ジャンプで避けられる敵は避けるべきだが、逆に優先して倒すべきなのはアロハ(ピョンピョン跳ねる裸足)くらいなもので、こいつはジャンプでは避けにくい上にマンホールの蓋を落としてしまう。蓋の空いたマンホールからはキムチ(足がキャタピラの敵)が3匹まで沸いてくるのでめんどうくさい。ちなみにキムチが出てこないマンホールは地下エリアへの入り口なので、落ちてもミスにならない。

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【アドバイス2:アイテムは大事だ】

 水鉄砲のゲージを回復する「ツボ」はもちろん、ステージによっては残り時間を伸ばす「時計」もとても大事だ。アイテムのほとんどは特定の位置を水鉄砲で撃つと現れるが、位置はノーヒントだし、かといって水鉄砲を乱射しているとすぐにゲージがなくなる。そもそもアイテムの種類や効果、入手法については説明書にもほとんど書かれていない。
 このアイテム関連の不親切さは確かにこのゲームの困ったところだが、アイテムの出現する位置や種類は常に固定なので、場所さえわかってしまえば問題はない。
 アイテムの中では、ハートと水鉄砲ゲージを全回復する「星」に加え、コンティニュー回数を無限にする「ESマーク」の重要度が高い。ESマークは豊島の地下エリア、品川の地下エリアでしか見つからない。豊島の地下へはステージ2つ目の建物の扉、品川の地下はステージ最初のマンホールから落ちれば行ける。ESマークさえとってしまえば、あとはもう死を恐れることは無い。不滅のバタリオンと化した所さんの姿は、水鉄砲を片手に紛い物の生命を洗い流す聖戦士だ…。

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 ↑品川のESマークはここ。

 

【アドバイス3:ボスは接近連射か安全地帯で倒す】

 23区編のほとんどのボスは「ピント」という、潜水服のようなものを着込んだ巨人だ。頭部から放つフラッシュ攻撃は絶対に避けられず、くらうと所さんの体力のハートが0.5個ぶん減る。ハートは最大で5個、つまり10分の1がフラッシュ攻撃で減ってしまう。ダッシュで接近して弱点の頭部に連射すればフラッシュ前に倒すことも可能だ。

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 ピント以外の23区のボスはピーマン岩崎(杉並ボス)、チェロッキー石渡(豊島ボス)、トドキタ(練馬ボス)というふざけた連中だが、動きが早くてわりとやっかいだ。いずれもボス部屋にあるはしごを登って、足場から適当に連射していれば倒すことができる。トドキタ以外は水鉄砲のゲージをゼロにして、下方向に弾を垂れ流すように撃てば楽だ。
 中野のボスはトンカチを乱射してくるトウリョウ。マリオに出てくるカメの3倍くらいのトンカチ量なのですごい。しかしこいつはまったく動かないし、はしごを登って足場を飛び越えれば倒さなくても先に進める。一体なんなんだという気になる。トウリョウの赤く血走った目には、所さんの姿はいっさい映っていないのだろう。レプリカントとして生み出され、トンカチを投げ続けるだけの存在…。そこにあるのはドラマだ。

 

【アドバイス4:23区編の進みかた】

 23区編のボスを倒すといくつかの扉がある。この扉に入ると別の区に行けるのだが、行き先は扉ごとに2つ設定されており、50パーセント半々の確率でどちらに進むかはわからない。一度クリアした区に戻ってしまうこともある。これをクソゲーワロタ草などと言うのは当然腰ぬけであり、前も書いた通りアイテムの位置は常に固定なので、それさえ覚えておけば一度クリアした区を何度プレイしようが問題はない。
 23区で最終的に目指すのは北西にある練馬だが、23区の南東の端にある品川には練馬へ一気に飛べるワープゾーンがある。地下エリアから地上に戻ってきたあと、すぐ右に建っている大きな家の2階の屋根から画面上に向けてハイジャンプ(B+Aボタン)すればいい。品川についたら地下でESマークを取り、練馬にワープできれば無駄がなくクールだ。むろん、クールを最優先の課題とするかどうかは人次第だ。

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 理想的な最短ルートは下のようになる。うまくいけば4つの区をクリアするだけで郊外編へ行ける。

・千代田 ボスを倒したら上の段の扉へ(港か新宿へワープ。港なら最短)
・港 ボスを倒したら下の段の左、あるいは上の段の右の扉へ。(新宿か品川へワープ。品川なら最短)
・品川 最初のマンホールから地下へ。地下でESマークを取って地上へ。地上へ出た先のすぐ右にある大きな屋敷の屋根からジャンプし、練馬へワープ。
・練馬 ボスを倒し、郊外編へ。

 新宿に出てしまったら、ボスを倒したあと上の段のいちばん右の扉に入れば千代田か豊島にワープする。千代田に出たら再度上の手順で進んで品川を目指す。豊島に出たらここの地下でESマークさえ取れば、あとは死に放題だから好きなだけ死んで先に進めばいい。

 

【アドバイス5:郊外編は地獄だ】

 練馬のボス(人のよさそうなおじさん)を倒すと郊外編になり、保谷、田無、東久留米、東村山、所沢を順番に進んでいく。
 地上は敵が多いので、雲の上を歩いていくのがいちばん楽だが、郊外編ではオトシブタという豚の敵が頭上から降ってくる。水鉄砲で撃てば倒せるが、当たると一撃死してしまうし、地面に落ちると穴を開けていく。穴に落ちるとこれも一撃死だ。郊外編で死ぬと保谷まで戻されてしまうので、ESマークがあっても慎重に進んだ方がいい。

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 郊外編のボスはツノを飛ばしてくるアカオニと、ダイナマイトを投げてくるC長さんだ。どちらも放物線を描く飛び道具を投げてくるので、接近連射で倒すのが早い。C長さんにはなにか元ネタがあると思うが、おれにはわからなかった。ちなみにボスがいた家の屋根の上でハイジャンプすると次のステージへ進める。なぜそんな仕様なのかはわからん。
 郊外編のステージは非常に短く、ウシが糞を飛ばしたり、恐竜が自転車をこいでいたりと、とにかくのんきな田舎として描かれている。分かれ道は無いし、地下エリアも高速道路もない。複雑な23区に対してのアンチテーゼと言える。23区で生活し、インスタグラムにキャッサバの澱粉の写真を載せているような連中でも、ひとたび郊外に行けば豚に頭をぶつけて死ぬ…これを優れた文明批評として受け止めることもできるだろうが、そこまで行くと完全におふざけなのでおれはそういうことは言わない。

 

【アドバイス6・旧日本軍に触れるな】

 郊外編ラストの所沢はやや長いが、塀の上を進んでいけば問題ない。最終エリアの所御殿は長いステージなので時計は取り逃すな。1階の3つ目の部屋、2階の2つ目の部屋に入ってすぐの窓に隠されている。
 所御殿の1階には、旧日本軍が立っている。まったく動かないが、攻撃するとこちらがダメージを受ける。いわば障害物に近い。それがなぜ旧日本軍なのか。なぜこちらがダメージを受けるのか。考察したいひとは考察するといい。跳ねるバズーカを撃つ敵(タブー)は倒せないのでジャンプで避ける。

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 2階の最初の部屋にはモドキという、所さんと同じ姿で左右対称の動きをする敵が出てくる。撃てば普通に倒せる。その後は落ちてくるシャンデリア、急に開く落とし穴といったワナが多いので慎重に進む(時計を1つも取っていないとタイムアウトになる可能性が高い)。チェロッキー石渡、ピーマン岩崎といった23区ボスも出てくる。安全地帯はないので接近連射がいちばんだ。さっきからボスの攻略は「接近して連射しろ」しか言っていない気がするが、妙な手心を加えればこちらが死ぬので仕方ない。
 ラスボスのドンナマは所さんの奥さん、つまりさやかちゃんの母親だ。接近して連射すれば倒せる。

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【男の戦いは続く】

 『所さんのまもるもせめるも』について、おれの知っていることはほぼ書けたとおもう。ちなみに、おれが生まれて初めて全面クリアしたのはこのゲームだ。前も書いた通り、クソゲーをクソゲーと呼ぶのは個人の裁量でかまわないと思うが、バターコーヒーもホットなベイブも知らない小学生ですらクリアできるゲームを「理不尽で難易度が高いクソゲー草」と評するのは真の男だろうか? あえて書かないが、本作のエンディングは非常に衝撃的なものだ。誰が黒幕なのか? 何が真実なのか? 何もわからない。今では押しも押されぬ大御所であり、世田谷ベースという男の城を手に入れた所さんだが、本作の続編が出ていない以上、彼の戦いはまだ続いていると言えるのだ。

 本作の設定・ストーリーに、名作と呼ばれるSF映画・アクション映画(と、その原作)に通じるものを見て取れるのはすでに述べた通りだ。それはレプリカントが跋扈する『ブレードランナー』だろうか。家庭を持つ男の反逆譚『トータル・リコール』だろうか。はたまた強大すぎる相手に蟷螂の斧を振りかざす『未来世紀ブラジル』だろうか。それは体制に取り込まれ、苦い敗北を味わう男の物語であろうか。

 お前がイメージする所さんは、日本地図にダーツを投げたり、CMに出て「このあとあと!」とか言うたけしにズッコけたり、カケフくんと変なスプレーをかけあったりする所さんだけかもしれない。成城で悠々自適に過ごす成功した芸能人かもしれない。今現在、21世紀の所さんは戦いを終えたのかもしれない。それでも、おれの心には、東京という得体のしれないシステムを相手に独り戦いを挑んだ男の雄姿が焼き付いているのだ。

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