ジャッカルの日

世田谷の河童料理専門店「ジャッカル」店主の日記ブログ。

ノミと曲芸師/『超人ウタダ』山本康人

 売れ残った恵方巻の再利用を考え、米粒で補強した海苔を色とりどりの具で飾ったおしゃれジャケットを作成したジャッカル佐崎さん。これをZOZOの社長に見てもらえればと、本社のある千葉県美浜区へと向かう彼の後ろを着いていくのは無数のネズミ、ゴキブリ、マダニ、カラス、ショウジョウバエ、カツオブシムシ、ノミ、カメムシ、コウモリ、江川達也、ウンカ、アライグマ、シバンムシ、チカイエカの群れであった…という内容の第12話「県警対組織暴力」は現在お蔵入りエピソードとなっており、オリジナルを見ることはできない。DVD版や再放送では江川の髪の毛を明るい緑色にするなどマイルドな描写に改められているという。[要出典]

 


 

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 『超人ウタダ』kindle unlimitedで読む。作者の山本先生は週チャンで連載してた『たまたまポンチー』の印象が強すぎる(おれには)。

 ゴリラ似(というかゴリラ)の刑事・歌田は「20万人の社員を抱える企業としての警察」の体質に染まり切った事なかれ主義。そんな彼の前に現れた怪しい風体の男・神崎竜五郎。神崎は「俺はお前の前世」「俺は大正時代に55人を殺した犯罪者」「お前は35歳で死ぬ」「俺たちは何をやってもいい超人」などパーみたいなことを言い放つが、歌田はこれを信じる。自分に残された時間が少ないことを知った歌田は、上司や同僚に反発しつつ、刑事らしい刑事に生まれ変わるべく奮闘するのだった。
 超人とはいえ、歌田は特別な能力を授かったわけではなく、神崎との会話の中でなにかしら事件解決のきっかけを見つけることがあるくらい。人間の刑事と幽霊の殺人鬼とのバディもの、と見ればなかなか個性的な設定ではないでしょうか。テレビドラマ版もあるらしく、歌田はドランクドラゴン塚地、神崎はラーメンズの片桐が演じている。わりとイメージぴったりな人選。

 組織のしがらみに囚われていた歌田が自らの正義感を信じ、市民を救う刑事になっていくという中盤までの展開はなかなか面白い。終盤、神崎の生い立ちが明らかになった後は神崎が呪いのナイフで人に乗り移って殺人を犯し、総理大臣を標的にするというトンデモオカルト展開になってしまったが。希望は残るものの報われないラスト、神崎の目的、そもそも神崎は本当に前世だったのか等の投げっぱなし設定は少々というかだいぶ気になるんですが、ブサイクな主人公がカッコよく見えてくる後半が胸熱な佳作です。