ジャッカルの日

漫画・ゲーム・映画・怪奇についてバカが感想と考察を書く

【特集】25年前のエロラノベレーベル「ナポレオン文庫」の名作珍作レビュー18選(前編)

 

 1980年前後生まれの性少年のポコチンを熱くした「ナポレオン文庫」から、幅広く18作品をピックアップ。元は文学フリマに出品した同人誌『二級河川15 古本仁義』掲載原稿で、同誌がboothショップで早々と売り切れてしまったため、ブログでも掲載します。(注:ド下ネタです)

kinyuukai.booth.pm

 


 

【概要】 

 ナポレオン文庫とは、20年以上前にフランス書院より刊行されていたジュブナイルポルノ…いわゆるエロラノベのレーベルである。漫画やビデオより比較的購入しやすい(小説には成人指定が無いため)、文庫ゆえ左手だけでページをめくれる(右手で別の事が出来る)等の利点から、オカズに悩む男子の強い味方であった。90年代のオタク中高生は皆、ナポレオン文庫か電撃姫のエロゲー紹介ページか遊人の『ANGEL』でシコり倒していたのである(個人の見解です)。現在でもそこそこの数のレーベルがあり、多種多様なシチュエーションで性少年のポコチントレーニングに貢献するエロラノベだが、ナポレオン文庫こそがその元祖と言えるだろう。商業的に出版された最初のエロラノベは、1980年代後半の富士見文庫から出ていた倉田悠子(稲葉真弓の変名)作品辺りと思われるが、レーベルとして本格的に刊行されたのはナポレオン文庫が初である。たぶん。ファンタジーやSFはもちろん、ミステリに時代劇、特撮パロディに格闘モノといった狭そうで実際狭いジャンルの作品群の中には、現在でも活躍する著名作家のタイトルも混じっている。
 今回はナポレオン文庫レーベルの中から、できるだけ広いジャンル、多くの作家を紹介できるよう、18作をセレクトした。そもそもこの記事は古本特集の一環として企画された「1000円(税込)の予算でどこまでシコれるか? 第1回・古エロ本シコリンピック~!」というものだったが、「クソすぎる」「そんな記事と一緒に載る身にもなってほしい」「Webチンカス」等の抜本的路線見直し要求が挙がったため、個人的に「ブックオフ108円コーナーに並ぶ安エロ本」の代名詞でもある本レーベルを取り上げることとなった。以下、基本的な書誌情報に加えエロシーンのエロさ(エロ度)、読み物としての面白さ(面白度)、キャラクターの魅力(キャラ)、イラストのエロさ・可愛さ(イラスト)、物語の斬新っぷり(斬新さ)の5つの視点から評価し、あらすじ・レビューと併せて紹介している。これらの作品は今でもわりと簡単に買えるので、興味を持たれた方は実物をアレしてみてはいかがだろうか。

※書誌情報については書名にAmazonリンクを貼っています。

-もくじ-

 


影魔王ザナック

ナポレオン文庫の記念すべき第1作にして大異色作、
けなげな姫様を読者もろともハード調教

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エロ度  ★★★
面白度  ★★★
キャラ  ★★★★
イラスト ★★★
斬新さ  ★★★★★★

【STORY】
 満月の夜、マルーン城では王女・サリアと隣国オーキッドの王子・ヤチスの婚姻を祝う盛大な宴が行われていた。しかし、封印より甦った影魔王・ザナックがサリアの侍女に姿を変えて城内へ侵入。サリアを花嫁とするべく、自らの魔城へ連れ去ってしまう。ただちに行方を追うヤチスだったが、サリアはザナックに凌辱の限りを尽くされ…。
【解説】
 魔王にさらわれた姫を助けに行く王子、という『ドラクエⅠ』レベルの直球な中世ファンタジー。大筋こそシンプルだが、王子の壮大な冒険についてはラスト 10 ページで簡単に触れられるのみ。あまりにも衝撃的過ぎるラストのせいもあり、記念すべきレーベル 1 作目にしてインパクト抜群の怪作である。話の展開自体は非常に丁寧なもので、サリアとヤチスだけでなく、侍女のマーファや父王、大神官といった脇役たちにも印象的なエピソードを用意してキャラを立たせ、後の壮絶な展開への布石としている。
 作者の龍門主樹は「松平龍樹」名義でのポルノ作品も多数。登場人物らがセックス中になぜか『新世紀エヴァンゲリオン』評を始めてしまう珍品、『発情期 ブルマ検査』が“第6回トンデモ本大賞”を受賞している。後の作品にも見られる特徴的過ぎるルビ使い(「うるさいわい」に「じゃかわしい」、「将来なされるであろう」に「きたるべき」と振るなど、まったく必要性が感じられない)は本作でも頻繁に登場するが、それに目を潰れば簡潔かつ的確な描写で文章は読みやすい。
 サリアとマーファのねっとりレズ描写も含めて読み応えある前半に比べ、舞台が魔王城に移ってからはいくぶん失速気味。サリアのセリフは「ひぎぃぃぃぃ!!」とかばかりだし、ザナックも張形を突っ込みながら「ほんに姫君は強情じゃのう」と、余暇を楽しむスケベおじいちゃんにしか見えない。とはいえ、ラスト5ページはこの辺の中だるみを吹っ飛ばす壮絶展開。ぜひ、このエンディングを見届けてから第一章を読み返してほしい。エロ目的でこの本を手に取った中学生に、さぞかし金冷法じみたショックを与えたことだろう。

 


 

ロックン☆ビーナス

俺の歌で女はヌレヌレ!
ダサ展開の連続だが妙に忘れがたい珍作

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エロ度  ★★
面白度  ★★
キャラ  ★★★
イラスト ★★
斬新さ  ★★

【STORY】
 気弱な高校2年生・隆司はギターの腕前を買われ、悪友・啓介のロックバンドに加わることに。学園祭のライブは大成功、グルーピーが付くほどの人気者になるが、実は隆司のボーカルには秘密があった。彼の歌声を聞いた女性たちはみな、なぜか発情してしまうのだ。さらに隆司の憧れの女教師・穂高昌子は、ロックンロールを聴いただけでも濡れてしまう体質。ロックの力とボーカルの力で、昌子相手に脱童貞を果たす隆司。しかし、その現場を啓介が偶然見てしまい…。
【解説】
 なぜ隆司のボーカルに催淫効果があるのかはまったく説明されない。そもそも、メインヒロインの昌子先生はロックなら何でも興奮してしまう人なので、隆司のボーカルの効果の程がいまいちよくわからない。「女の取りあいが原因でバンドが崩壊」という、現実的(かつショボい)トラブルが巻き起こる青春モノ。
 ロックバンドという題材も時代を感じさせるが、話の展開も「更衣室覗きがバレて女子に囲まれる」「夜の街で偶然美人教師に出会い、部屋に誘われる」というテンプレつるべ打ち。と思いきや、「自分からホテルに誘っておいていきなりキレ始める空手少女」「母親 ( 美人でもなく、普通の小太りなおばさん ) がいきなり風呂場でフェラチオしてくる」「最終的に隆司と結ばれるのは昌子ではなく、後半でようやくスポットが当たるクラス委員長の美佳」など、あちこちで妙な違和感がしこりとして残る。
 終章では学校を退任することになった昌子が、隆司と啓介の2人を呼んでパーティを開催。お別れセックスを始める啓介だが、自分のロックだけでは昌子をイカせられないことに気づく。一方、隆司は自分のボーカルをシンセサイザーで流すことで昌子を大興奮させることに成功。だんだんノッてきた啓介は(寝取られとるんやで、お前)キーボードを叩き始め、2人のラブセッションに参加する。「俺はお前に首ったけ 地獄の底までつきあうぜ」「ホールドミイ タイト フォーエヴァー マイラブ マイダーリン」。…何やってんだこいつら?
 良作とは言えないが妙に印象に残る、怪作未満の1本。

 


 

吸血学園  ヴァージン・クライシス

お約束展開+ビックリ展開を交えつつ
丁寧な描写で読ませる佳作

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エロ度  ★★★
面白度  ★★★★★
キャラ  ★★★★
イラスト ★★★
斬新さ  ★★★

【STORY】
 亮と京子は、同じ高校に通う幼なじみ。ある日、彼らの前に「氷のような笑顔」を見せる転校生・隼人が現れる。たちまち女生徒の人気者となる隼人だが、彼は完璧な処女を求めて各地の高校を渡り歩く吸血鬼だったのだ。亮は隼人の不審な行動、そして彼が京子を狙っていることを知る。
 隼人は、亮のことを密かに慕う高校一の美少女・梨沙を支配下に置いていた。梨沙が隼人と行動を共にするのを見た亮と京子は後を追い、隼人の父親が経営する巨大ディスコに到着。喧噪渦巻く中、2人は離れ離れになってしまい、亮は梨沙に誘惑されてしまう。隼人は京子の心を揺さぶるため、亮と梨沙の濡れ場を見せつけるが…。
【解説】
 巧みな心理描写に、無駄と無理のない構成が映える良作。わたなべよしまさのイラストも、時代は感じさせるもののエロ可愛らしくハイクオリティ。エロラノベではなく、往年の「ジュブナイルポルノ」と呼びたくなる雰囲気がある。奇妙な転校生によって、平和な学園日常が少しずつおびやかされていく…という筋なんて、いかにもジュブナイル的ではないですか。
 隼人は超人的なパワーと悪魔的な魅力、妄執を兼ね備えてはいるものの、本当に吸血鬼であったかどうかはぼかされているのも良い。彼は日光や十字架といった吸血鬼らしい弱点は一切見せておらず、彼のしもべとなった女の子たちも吸血鬼になっているような描写はない。
 処女の血を狙おうとする隼人に対し、「処女でなくなればいいんだ!」と公衆の面前で中出し初SEXを始めるクライマックスにはわりと度肝を抜かれた。吸血鬼ものの小説はけっこう読んできたつもりだが、こんな解決方法は初めて見た。目からウロコである。

 


 

TOKIO機動ポリス 美少女隊員、出動せよ!

コンディション・グリーン緊急発進!
機動警察ガチレイパー

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エロ度  
面白度  
キャラ  
イラスト 
斬新さ  

【STORY】
 2034年、東京。貧困と凶悪犯罪が跋扈するこの都市で、警察組織に代わり犯罪者と戦う機動メカ部隊…それが東京私設警備隊、通称TPPである。
 TPPに新設された「機動ポリス第1小隊」のメンバーとして転属してきた、ボーイッシュな少女・紀子。若き新隊長・景子のもと、メカフェチ青年の康雄、現役軍人でスポーツ刈りの大男・大山、クールな才女・香代子といった個性的な面々が集った。大山と香代子はドスケベなので毎晩ハメまくっており、紀子もプレイに巻き込まれてしまう(康雄はそれを見てドン引き)。紀子は過去のトラウマによりセックスに対し嫌悪感を持っていたため、香代子たちのように楽しむことはできなかった。
 景子と不倫関係にあるエリート課長・柴田が赴任し、ますます性が乱れる第1小隊。そんなある日、新型の軍用メカによる現金強奪事件が発生。これまでにない苦戦を強いられ、紀子の操縦する機体も激しいダメージを受ける。だが機体から伝わる激しい振動が、紀子を新たな快感に目覚めさせるのだった…!
【解説】
 ぶっちゃけ『機動警察パトレイバー』のエロパロである。キャラクター造形はそのまんまだし、イラストも明らかに意識している。カップルになる組み合わせも劇中とほぼ同じ。よかったのはアニメ版が元だったことで、漫画版だったら太田と進士さんの濃厚ホモを見せられていた可能性もある。無いか。
 舞台は荒み切った末法のTOKIOシティなので、起きる犯罪はわりと陰惨。メカも人型ではなく多脚戦車型なので地味な印象。明るさや爽快感はイマイチ欠けるが、ロボット同士のアクションシーンをはじめ、雰囲気は悪くない。魅力的な舞台設定なのに、クライマックスは紀子と康雄が結ばれてオシマイ、というのがもったいなく思えるくらい。あとがきによれば続編構想もあったらしい。作者の公式サイトには“不愉快な思い出”として、「編集者にパトレイバーみたいなのを書けと強要された」という記述があったりするが…。
 本作はアニメ化されており、DVDは入手難だがDMM動画はじめダウンロード配信サイトで全2巻を観ることができる。紀子を演じるのは川上とも子(河内笙子名義)で、メカデザインもなかなかにカッコ良いのでちょっと気になる。

 


 

トキメキ☆レッスン 麻由のきゃぴるん初体験!

王道展開を直球で描く
ロリショタ大家の学園ラブコメ

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エロ度  
面白度  
キャラ  
イラスト 
斬新さ  

【STORY】
 奥手な女子高生・真由は自分の気持ちに素直になれず、クラスメイトの徹とは喧嘩ばかり。そんな真由を見かねた女友達たちは、テレホンオナニー指南にショタのオナニー覗き、実践レズセックスと身体を張って真由を応援。いろいろあったが結果2人は結ばれてめでたしめでたし。
【解説】
 作者は作家・漫画原作等で現在も活躍する雑破業『アイドルマスター シンデレラガールズ』『遊戯王ARC-V』では脚本家として参加している氏の商業デビューは、当ナポレオン文庫のNo.2003『ゆんゆん☆パラダイス』である。ナポレオン文庫編集部とは、方向性の違い等から決別したようであるが…。
 少年少女の…と言うか、ショタとロリの甘酸っぱい性の目覚めをギリギリアウト級なまでに情感たっぷりに描く作風が特徴的である。本作は作者のナポレオン文庫における他作品に比べればプレイ自体は比較的スタンダードで、話の大筋もシンプル(いささかシンプル過ぎるほど)。サブタイトルにあるような“きゃぴるん”としか言いようがない一部の描写はさすがに時代を感じるが、文章自体はエロもそれ以外のパートも丁寧で読みやすい。「元気、ボーイッシュ、お嬢様、天然」とわかりやすく個性付けされた女子たちのキャラも良い。

 


 

セーラー・バニーX ウサ耳女子高生♥あぶない体験

中身ゼロだけどとにかく明るい
エロのジェットコースター

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エロ度  
面白度  
キャラ  
イラスト 
斬新さ  

【STORY】
 女子高生の宇佐美美由(うさみみゆ)は、憧れのイケメン教師・風間に処女を奪われて以降、興奮するとウサギの耳と尻尾が生える特異体質になってしまう。ウサ耳を引っ込めて元に戻すためには、一度エッチをして絶頂を迎えないといけないらしい。大変ですね。しかもウサ耳体質になって以来、なぜかエッチな事件に巻き込まれ続ける美由。スケベな生物教師、レズのクラスメイト、高校生の痴漢、オールドミスの伯母、下着売り場のエロ店員、馬並みの黒人、痴漢の不良仲間たち…。全員と一通りヤッたけど、やっぱり風間先生がいちばんですっ!
【解説】
 作者はエロ女流作家の紅くりす。ナポレオン文庫全体の1割以上を占める11作を執筆しており、まぎれもない代表作家と言える。彼女の作品は女性主人公の一人称が多いのに加え、とにかく展開が早く、とにかくエロシーンが盛りだくさんなのが特徴。ストーリーの中にエロを挟み込むのではなく、エロシーンの連続で物語を成立させていると言うべきか。正直、物語といっても大したハナシではなく、今作の「なぜ美由はウサ耳と尻尾が生えてくるのか?」という読者全員が抱くであろう疑問に対しては「そういう家系だから」で済まされる。家系なら仕方ないな。
 最終的にヒロインとくっつく風間先生はどう考えても腐れ鬼畜野郎なので先行き不安だし、作中はわりとハードなプレイも多い。なのに、作風は底抜けに明るく能天気。読み終えても丸めたティッシュ以外は何も残らない、とことんエロ展開に徹した作品と言える。猫島礼のイラストも大変可愛らしい。

 


 

格闘少女☆麗矢 バトル・オブ・セーラー服

秀逸なバカ設定を活かしきれていない
腑抜けたパンチに萎えるばかり

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エロ度  
面白度  
キャラ  
イラスト 
斬新さ  

【STORY】
 いま女子高生に最も人気のスポーツ、それはセーラー服武道! 青葉台高校のセーラー服武道部顧問・丹下健士郎は、新体操部の風祭麗矢をエッチな必殺技で破り、全国大会に向けての新戦力としてスカウトする。彼女は幻の古武術、風祭流酔古拳の最後の伝承者だったのだ。特訓と称した数々のセクハラを受けつつも成長し、県大会ではみごと主将の座を射止めた麗矢。新体操部の美人顧問の横槍、主将の座を追われた先輩の裏切りと問題は続出したが、全国大会には出られたし、優勝もできたのでよかった。
【解説】
 そもそも、セーラー服武道って何? 本文中の解説によれば「何でもアリの武道であること」、「セーラー服着用が義務付けられているが特に必然性は無いこと」がわかる(要は、あまりよくわからないということがわかる)。女性のための護身術なのに、房中術が大きなウェイトを占めているという時点で相当アレである。そもそも、セーラー服武道の顧問が男って時点で納得できん。
 バカバカしくも独創的な設定だが、悪ふざけが過ぎる地の文と展開のせいで、燃えるシーンも萌えるシーンも皆無。サオ役の健士郎がいくらなんでも最低過ぎて、まったく感情移入できない。どうにも躍動感が感じられないイラスト、「シュウウウッ。オー、イェッスッ。ファッカー」「一念ボッキ岩をも通すたあ、このこったあ」などの気の抜けるセリフ回しもキツい。
 それでも格闘シーンの迫力がすごいだの、セーラー服武道ならではのびっくりするような技が飛び出すだのであれば褒めようがあったのだが。ライバル校の主将・涼子の必殺技「螺旋くずし」は、早い話がただの指マン(ついでに言うと、健士郎の必殺技「淫肉電光石火」「桃色ドリル掘削攻撃」も要は手マンである)。県大会ではこの秘技に屈した麗矢、全国大会決勝戦でも同じ手をくらったあげく浣腸までされて大ピンチに陥るが、自らも指マンで対抗。最終奥義「指マン+言葉責め」を受けた涼子はおしっこを漏らして気絶、みごと全国の頂点に立った麗矢だが、猛烈にウンチがしたくなり女子トイレに駆け込むのであった…という締めで全国大会編は幕を閉じる。読んでるあいだ、ずっと年金とか保険料のこととかを考えてました。

 


 

テレパラサイト☆コール 小悪魔たちの囁き

謎が謎を呼び謎のまま終わる
恐るべき観念ホラー

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エロ度  
面白度  
キャラ  
イラスト 
斬新さ  

【STORY】
 女子高生の間で噂になっているという「恐怖テレクラ」。その番号に電話すると、アポも取らないのに男がやってきて、少女たちをさらっていくのだという。
 「恐怖テレクラ」の番をしているのは、“スキッズ”を名乗る少年たち。「スキゾ」と「キッズ」を合わせた名を持つ彼らは、他人の思考を読み取る力を持っていた。水泳選手の玲子は、スキッズの首謀格たる少年・浩一に調教され、自ら犬と化す。優等生の理美はスキッズの小学生・雅雪に翻弄された挙句、黒人の精子を受精される。玲子と理美の元同級生・友香は、偶然再会した理美の変わりように何らかの気配を感じ取る…。
【解説】
 「スキッズ」とはいかなる組織なのか。少女たちを調教し、欲望を具現化させる彼らの目的とは? 浩一をはじめスキッズは、なぜ人の心を読み取れるのだろうか…? そうした劇中で提示される謎の数々は、一切明かされることのないまま終わる。えーーッ!? モヤモヤしたものは残るが、本作は別に謎解きを主体にした話ではないし、多くを語らないのは正解かもしれない。
 文章は微に入り細を穿つという表現がピッタリだが少々回りくどく、文体がエロに結びついているかというとそうでもない。明確な主人公が不在のまま観念的な会話が延々と続き、言葉責めのようなプレイが平熱展開。そしてあらゆる謎が解決しないまま、物憂げな表情でタバコを加える友香の1枚写真が挿入され、物語は幕を閉じる。正直エロラノベとしてはヌケないのだがインパクトは強く、エロ学生の青春読書体験に爪痕を残してくれそうな1冊である。
 作者の鳥山仁は作家・ライター・編集者として、現在でもエロ界隈を中心に活躍中。2011年にはクトゥルフ+第二次世界大戦モノの『ネクロノミコン異聞』といったシリーズも執筆している。

 


 

リバース ドリームダイブで学園を救え!

便利すぎる弟幽霊+女教師の姉が
学園の事件に立ち向かう!

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エロ度  ★★★
面白度  ★★★★
キャラ  ★★★★
イラスト ★★★
斬新さ  ★★★★

【STORY】
 新任教師・牧原卓美の心の中には、死んだ双子の弟・拓馬の意識が住んでいた。身体の主導権を交代する“リバース”、他人の精神を拓馬の意識に触れさせる“ドリームダイブ”…卓美は拓馬の助けを借り、不思議な能力で生徒の心を開いていく。男性恐怖症の少女・あずさも、2人の力を合わせた(エッチな)カウンセリングで立ち直らせることができた。
 順調に教師生活を送る卓美だったが、学園を牛耳る若き教頭・須藤武史と、その父親である総裁・須藤剛一郎に目をつけられてしまう。教え子の結城真理とともに拉致され、監禁調教を受ける卓美。拓馬は武史の隙をついて、身体を乗っ取ることに成功するが…。
【解説】
 PC98でゲーム化もしている作品。新米教師が死んだ弟の力を借りて学園内の問題を解決していくという設定、読むとなかなか面白い。「弟の存在は卓美の妄想で、彼女はただの二重人格」というようなオチはないのでご安心を。
 拓馬は自分の意識を卓美の身体から飛ばし、幽霊チックに壁をすり抜けて周囲を偵察できるという便利すぎる能力も持っている。死と生が題材の1つでもある本作だが、作風は明るく、サイコレズ生徒もちゃんと教師らしく(は無い方法でだが)救っているのがよい。ラストもこれ以上はないほどの大団円。エロ度はやや薄めだが話は普通に面白く、イラストも可愛いらしい。
 悪役の須藤親子が、いくらなんでも悪役悪役し過ぎで逆に面白い。「普通そんなこと言わねーよ!」みたいな秘密までバンバン喋ってしまうウカツさで、とても市1つを丸ごと牛耳る陰の実力者とは思えないが、そういうところも含めて気軽に楽しめる佳作。

 


 後編ではエロラノベミステリー三大奇書の1つとして数えられる大怪作『ヒ・ミ・ツの処女探偵日記 金田一流の事件簿』、森岡浩之作のなんか既視感あるSFアドベンチャー『シャランドの嵐 封印された少女の記憶』、ナポレオン文庫の中でも最低クオリティの1冊『魔海伝説 遙かなる結界の光』、エロラノベらしからぬ傑作エンターテインメント西部劇『華麗なる女賞金稼ぎ ハイランド三姉妹、危機一髪!』、中身はともかく表紙イラストがヘタ過ぎてそれしか印象に残らない『女忍者秘蜜淫法帳 沙霧姫☆雪肌七変化』などをお届けします。待て次回。

 

※後編はこちら

meattrain.hatenablog.com