ジャッカルの日

世田谷の河童料理専門店「ジャッカル」店主の日記ブログ。

【特集】アイスキング・ナイススウィング【アドベンチャー・タイム】

 『アドベンチャー・タイム』面白ぇ~! 前々から存在は知ってたけど、Amazonプライムで観放題なのをきっかけに視聴しはじめて、すっかりハマってる最中です。東京MXテレビでも平日4時半から再放送してるし、今から見始めるのも全然アリなんじゃないでしょうか。「1話完結」「濃くて飽きない」「キャラかわいい」と、サクっと観られる要素はすべて兼ね備えてる。 Youtubeでもカートゥーン・ネットワークが公式で何話か配信しているので、1話だけとりあえず観てみてほしい。Youtubeで「アドベンチャー・タイム」と検索すると、岡田斗司夫が「『アドベンチャー・タイム』はポスト『おそ松さん』!」「『君の名は』と『けものフレンズ』より面白い『アドベンチャー・タイム』!」という不快な持ち上げ方をしてますが、これは無視していいと思います。

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1話Aパート「恐怖のパジャマパーティ」。プリンセス・バブルガムの作ったゾンビパウダーにより、キャンディ王国にゾンビがあふれてしまった! キャンディ王国の住民たちは驚くと破裂してしまうため、人々に気付かれないようこっそりゾンビを退治しなければいけない。フィン(主人公。人間)とジェイク(フィンの相棒。犬)はどう立ち向かう!? という、どう考えてもハロウィンスペシャル回とかでやるストーリーで1話目でやる内容じゃないと思うんですが、初見の視聴者にも「このアニメはこういうノリなんだな」ということを叩き込んでくれるので問題ないです。


 Youtube公開分では、人気キャラのマーセリン(ヴァンパイアクイーン)が出てくる回も観られますね。首筋の噛まれ後がキュートなベースギター好き、歌好きの1000歳で、フィンたちに意地悪をしかけてうっかり殺しかけたりもするけど、基本的にはいい人。わかりやすいツンデレ。

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 『アドベンチャー・タイム』は2010年から今現在まで続くシリーズで、アッパッパみたいな展開に反して設定等はやたら作り込まれているため、膨大なキャラクターがいるわけなんですが、主人公のフィンたちの宿敵…ばいきんまんやモジョ・ジョジョの立ち位置にいる“アイスキング”はなかなかに味わい深いキャラ。名前通りの外見をした、ヒゲだらけのオッサンです。

 

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 初登場は第3話Aパート「アイスキングの花嫁」。「いずれ自分を好きになって結婚してくれるにちがいない」という根拠不明の信念のもと、各国のプリンセスをさらって牢に閉じ込めているというヤバいジジイとして登場します。まあ「悪役」としては普通だけど、アイスキングの場合はそのコミュ障ぶり、高齢未婚者ぶりが強調して描かれているため、観ていていろいろツラい気持ちになってしまう。いちおうアイス王国の王様というだけあって、強大な魔力と権力を持っているはずなのだが、プリンセスたちに対しては「監禁」することくらいでしかコミュニケーションできない。クッパですら息子がいたり軍団員には慕われたりしていたのに、アイスキングの部下はペンギンだの氷のモンスターだの、会話ができそうにない連中ばかり。そんなわけで主人公のフィンたちからは基本マヌケ扱いされている。


 アイスキングのヤバさがビンビンに感じられるのは、Youtubeでも公開されている30話Aパート「フィオナとケイク」の回。

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 この回はなぜかキャラクターがみな性別転換しているという、いわゆる「公式が病気」な話。フィンは活発でスキッ歯な少女フィオナ、ジェイクは微妙におばちゃんチックな猫のケイクになっている。プリンセス・バブルガムはプリンス・ガムボール、アイスキングはアイスクイーンとして基本的な性格はそのままで登場する。ぶっちゃけ、この回はおなじみのキャラが性別転換していること自体が最大のギャグという出オチ回で、いつものカオスな展開はおとなしめ。フィオナとプリンスがイチャイチャしている絵ヅラは確かに面白いけれど、話をしては物足りないな~…と思っていたら、最後の最後でドンデン返し。
 この「性別反転世界」、実はアイスキングが書いたパロディ、つまり同人小説だったというオチがつく。アイスキングは宿敵のクソガキであるフィンとジェイクを女体化させ、自分の分身であるアイスクイーンを退治させたうえで、「でもアイスキングは大好きー! お嫁さんにして」などと言わせている。いくらなんでも歪み過ぎだろ! 現実の憂さ晴らしを2重3重に叶えちゃってるよ! いやまあ創作の基になるエネルギーってそういうもんかもしれないけど、仮にもアニメのキャラクターであるお前がそこまでガチな現実逃避するなよ! とかまあ、いろんな想いにあふれ出てしまう。

 

 とまあ、アイスキングはマヌケな悪役であると同時に、こちらをドキっとさせるような哀愁に満ちた危険なキャラクターなのだ。先述のヴァンパイアクイーン、マーセリンとは実は本人も記憶していない繋がりがあったり、「アイスキング」となる前は別の人生を歩んでいたことが明らかになったり…。単なるクソアホの色ボケジジイかと思っていた視聴者にカウンターパンチを浴びせてくるエピソードも用意されている。マーセリンとの意外な、そして哀しい関係が明らかになる52話Aパート「君を忘れない」はシリーズ屈指の名編として挙げる人も多いと思われる。

 

 個人的に心かき乱されたのが8話Aパート「人生のお楽しみ!」は、フィンがジェイクにイタズラするために作ったパイ投げロボット、ネプターのお話。フィンはネプターに電力を与えるため、アイスキングの放つ氷の稲妻を利用することを思いつく。みごと作戦は成功、ネプターは完璧なパイ投げロボットになるのだが、アイスキングはネプターを奪おうとする。「ワシの稲妻を受けて覚醒したお前はワシの息子同然! いっしょに暮らそう!」と。
 しかしネプターはフィンと一緒にイタズラ人生を送ることを決め、アイスキングに毒入りのパイをぶっつけて撃退。めでたしめでたし…。エンディング、気絶したままのアイスキングは、ネプターと2人きりで沈みゆく夕日を眺める夢を見ていた。

「パパ、プリンセスたちをつかまえに行く?」
「いや、いいんじゃ。このまま、もう少しこうしていよう」
「ずっと愛しているよ、パパ」

 息子になるはずのネプターにも見放されたアイスキング。一筋の涙を流しながら、理想の夢を見ていたのだった。

 

 いろいろなエピソードで「主役級」とまではいかないが、印象深い活躍を見せてくれるアイスキング。実はアイスキングのことを慕ってくれるキャラは劇中にもそれなりにいるのだが、アイスキング自身はそれに気づいていなかったりもする。アニメの悪役が時折見せてくれる物悲しさ、中年になるとこーいう一面に心動かされてしまうなあという話でした。『アドベンチャー・タイム』、マジでキャラの1人1人が濃ゆい描写されてるから見応えあるぞ! 高カロリーだぞ!