ジャッカルの日

漫画・ゲーム・映画・怪奇についてバカが感想と考察を書く

【特集】25年前のエロラノベレーベル「ナポレオン文庫」の名作珍作レビュー18選(後編)

 ※前編はこちら

meattrain.hatenablog.com

 

-もくじ-

 

ウィアード・ハンター 時空妖術書の謎

キャラ設定盛り過ぎ、エログロやり過ぎ
過剰サービス精神の二郎系小説に大満足

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エロ度  ★★★★★
面白度  ★★★
キャラ  ★★★
イラスト ★★★★★
斬新さ  ★★★★★

【STORY】
 「ウィアードハンター」…彼らは妖魔を狩るためのエキスパートである。液体金属の鎧「リキッドアーマー」を装着し、世界規模で展開する協会のバックアップの下、日々戦いを続けているのだ。
 強大な退魔士の血を引く少年・剣と、虎人族の少女・虎紅。ともにウィアードハンターである 2 人は任務中、400年後の未来から来たと名乗るウィアードハンター・キャナリーと出会う。キャナリーは過去へと逃げ込んだ魔導犯罪者・ミゲルを追ってこの時代に来たのだという。
 ミゲルの求める悪魔の魔導書マルボルギアは、とあるミッション系の女学院に封印されていた。妖術で学園を支配したミゲルの元へ、剣・虎紅・キャナリーが向かうものの、強大な力を前にキャナリーは倒れた。剣と虎紅は、操られた女生徒たちと共に凌辱の限りを受けることになる…。
【解説】
 ツボを抑えたエロにわりと容赦のないグロ描写、小道具満載のアクションと、見どころの多い娯楽作。一気にかっ込みたいところだが、なにせ名前付きの登場人物が多く、視点も次々と切り替わりながらエピソードが展開するのでボリューム感はある。というか、全体的に要素が詰め込まれ過ぎの印象があり、読んでいて混乱をきたすほど。ヒロインの虎紅からして、「虎の姿に変身できる獣人」で、かつ「変身ヒーローようなアーマー」を着込み、「妖魔に対抗できる腕利きハンター」である。どれか1つでよくない…? 正直なところ、それらすべての設定に必然性があるとは思えないし。出てきた意図がわからない「月読の姫様のお使い」だの、ラストのとある人物の出生の秘密だの、冷静に考えると首をかしげてしまうような箇所も少なくない。腰を据えて読むほどに、細部が気になってしまうのは少々惜しい。
 作者・中笈木六は「ナポレオン文庫小説大賞」の受賞者。雑破業、星野ぴあすに憧れてこの業界に入った…とは本人の弁。『あそびにいくヨ!』シリーズを書いたラノベ作家・神野オキナとはなぜか公式ホームページを共用しており、同サイトによれば中笈木六は昭和45年の1月生まれで、神野オキナは 70 年生まれの山羊座とのこと。

 


 

封印された少女の記憶 シャランドの嵐

少女の記憶に眠る超兵器の秘密!
手堅く読ませるが終盤は…

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エロ度  ★★★
面白度  ★★★★
キャラ  ★★★★
イラスト ★★★★
斬新さ  ★★

【STORY】
 崩壊後の世界。町を離れ独り暮らす少女・リュミアの住むクレーター跡を、ミアフィス連邦の軍団長・ゼルクとその兵士たちが襲撃。逃げ出したリュミアは通りすがりの少年・トールに助けを求めるが、2人はシャランド王国の国境警備隊に捕らえられる。
 シャランドの女司令官・ネイラと副官・フィリーは、リュミアが終末戦争を引き起こしたとされる究極兵器“ラストタリオン”の秘密を知ることに気付く。普段は記憶の奥底に押し込められているが、愛する人とのセックスで絶頂に達したとき、リュミアはその記憶をすべて取り戻すのだ。リュミアの秘密がミアフィス連邦に知られれば、シャランドはおろか世界の存亡の危機になりかねない。援軍を要請したゼルクは圧倒的兵力を持ってネイラ隊を襲撃。リュミアとトールもミアフィス連邦の手に落ちる…。
【解説】
 作者の荒神伊火流は SF作家・森岡浩之の変名。古代超兵器の秘密を知る少女を巡り、王道な物語が繰り広げられる。細やかな描写が世界観にリアリティを与えており、大変読みやすい。旧文明の遺産たるポンコツトラックを運転するトールが、エンジン音にかき消されないよう大声を張り上げてリュミアと会話するシーンとか、さりげない一幕ではあるけれど、脳内再生余裕な名シーンと言える。話の先が気になるせいで、エロシーンがまどろっこしく感じるほど。ちなみに“ラストバタリオン”の正体については、目次の章タイトルで完全にネタバレされている。
 中盤まではぐいぐい読ませるが、終盤、ゼルクがリュミアを拉致して以降は、名前は出さないが国民的アニメの代表作ともいえるアレそっくりの展開になってしまう。ここは本作の大きな弱点で、「ああ、要はアレの二次創作なのか~」と考えてしまうと途端に物語自体がチープに感じられてしまう。あんまり意識しない方がいいのだろうが。

 


 

遥かなる結界の光 魔海伝説

イラスト以外の長所が見当たらない
ゴミ展開のマリアナ海溝

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エロ度  
面白度  ★
キャラ  
イラスト ★★★★
斬新さ  ★★

【STORY】
 スケベ高校生の和也と真は、同級生の小久保が突如女体化してしまった理由を調べていた。調査中、和也は逆ナンされた見知らぬ美女とセックスするが、女はいきなり爆発四散、部屋中に臓物を撒き散らす。驚いて逃げ出した和也の前に謎の男が現れ、「女を殺したな、殺人者は死刑だ」と銃を向ける…。命からがら追っ手をまいた和也は、小久保が訪れたという茨城県の海岸へ向かい、消息を絶つ。
 真は幼なじみの美奈とともに和也を追い、茨城の海岸にたどり着くが、不思議な異空間に迷い込んでしまう。超科学で生み出された異空間は、遥か昔に地球を訪れた宇宙人たちのアジトだったのだ!
【解説】
 ヌケない・つまらない・くだらないの三拍子揃った最低クオリティの1本。「先の予想もつかないストーリー」と言えば聞こえはいいが、展開は雑の極みで突っ込み疲れるレベル。登場人物は世界の果てのように頭が悪い。こんな内容だがイラストはハイクオリティで、本作の評価点はそこだけである。
 冒頭は(多少は)先が気になるように書かれているが、中盤も中盤の96ページで「真はテレパシーで相手の考えることを読み取るし、多少の念動力も持っている」と、まさかのエスパー設定が明らかに。唐突過ぎる新事実が“みなさんご存知の通り”みたいなテンションで展開されるので「知らねえよ」としか言いようがない。以後は和也と美奈もエスパーであることが明かされ、超能力を駆使して科学兵器を操る宇宙人たちをなぎ倒していく激安展開に。唐突過ぎるんだよ! いや、「ピンチに追い込まれるとオーラが燃え上がる」って描写は64ページにあったけどさ、オーラとかいきなり言われても困る。
 主人公たちにまったく好感が持てないため、次元の狭間でひそやかに暮らしていた宇宙人たちの村に、バカがカチコミをかけて全滅させたようにしか見えない。あと「浦島太郎は女だらけの宇宙人に囚われ、精力を絞りつくされて老人になった」とか、江戸時代の「うつろ舟」の話だとかのおもしろSF解釈もあるけど、どーでもいいって感じッスわ。エロ部分も「チ×ポ入れてえ」、「はいはい、すぐにお入れしますですよ、はいーっ」など萎える会話ばかりで実用に耐えない。和也・真とセックスした女はほぼ全員内臓を撒き散らして死ぬし、ヒロインの美奈は下着姿を見せるだけで絡みなし。ヌかせる気ねえだろ!!

 


 

沙霧姫★雪肌七変化 女忍者 秘蜜淫法帖

姫武者&ショタ若様が妖魔に挑む!
くノ一エロ忍法は見せ場無し!

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エロ度  ★★
面白度  ★★★★
キャラ  ★★★
イラスト ★★
斬新さ  ★★★

【STORY】
 時は戦乱の世。武央の国の領主・剛炎は、魔魅に見入られし者が集うと呼ばれる暗黒の地、夜魔帝国への遠征中に行方知れずとなる。家臣たちは報復を進言するが、剛炎の息子・夢麿は腰を上げようとしない。夢麿の若き妻・沙霧はそんな夫の態度に業を煮やす。
 夜魔帝国は他国への侵攻を本格的に開始した。妖淫界の奇怪な術に対抗するすべは無く、沙霧の生まれ育った摩虎羅国は滅ぼされ、子飼いのくノ一らも夜魔の手に堕ちる。怒りと悲しみで我を失った沙霧は夢麿に刃を向けるが、セックスしたら仲直りできた。夢麿の未知なる力、隠された出生の秘密に気づいた夜魔帝国の女王・氷美花は、夢麿を我が物にせんと画策するが…。
【解説】
 表紙裏表紙のイラストが特筆レベルでヘタッピな本作。本文イラストはここまでアレではなく、女の裸やおっさんの顔は悪くない。逆に言うと着衣の女性、おっさんの体、おっさん以外の男は壊滅的である。
 和風の異世界を舞台にしたファンタジーだが、タイトルから想像できるようなくノ一物ではない。くノ一は確かに登場するのだが、みな忍術を披露する間もなくヤラれてしまうモブ扱いでしかない。唯一披露される忍術は「声を出さずに言葉を伝える」という単なるテレパシーで、地味にも程がある。山田風太郎ばりの淫術合戦を期待していると肩透かしをくらうだろう。
 昼行灯の若様&勝気な姫君 vs 妖魔軍団、という図式はなかなか面白い。終盤はやや急ぎ足になるが、お約束と意外性がほどよくミックスされた展開に作者のサービス精神を感じる。ただ肝心のエロシーンはどれも尺が短く、取ってつけたような印象しかない。いっそのこと、まったく活躍していないくノ一らの存在をまるまる削り、他の描写にページを割いていれば読み応えのある戦国伝奇エロ小説になっていたのではないか。そう思えてしまうほど、くノ一たちがホント役立たずで…。

 


 

ハイランド三姉妹、危機一髪! 華麗なる女賞金稼ぎ

無法の荒野を行く女賞金稼ぎ!
エロも面白さも抜かりなしの傑作

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エロ度  ★★★★
面白度  ★★★★★★
キャラ  ★★★★★★
イラスト ★★★★★
斬新さ  ★★★★★

【STORY】
 荒野を駆ける美人姉妹の賞金稼ぎ、その名もエレン、ジーナ、ライのハイランド三姉妹。銃もギャンブルもお手の物、色気で悪党たちを屈服させる彼女たちの前に敵はいない! 超A級賞金首キルリアン・オーラを探し求め、とある町を訪れた三姉妹。雑貨屋で働く童貞青年・ロジャーを拉致同然にさらって旅に同行させるが、ロジャーもまんざらではない様子。
 旅の最中、悪徳牧場主のアダム・リンガムとのギャンブルに大敗してしまったジーナは、最後のチャンスとして競馬勝負に挑む。牧場主相手に競馬はあまりに不利と思われたが、ロジャーとライが偶然出会った少年・アレックスとその馬・リズミカルに勝負を託す。ロジャーの目利き通り、リズミカルは 5 頭身差を覆すすばらしい走りで大逆転をもたらした。
 自由を勝ち取り、故郷の町でくつろぐ一行だが、競馬での負けを恨むアダムは殺し屋を雇ってエレンとジーナを誘拐する。ライとロジャーは 2 人を救出するため、リンガム一家のアジトを目指す…。
【解説】
 この界隈では比較的珍しい「西部劇」という題材を、見事にエロラノベに落とし込んだ傑作。メインストーリーは「実在するかも疑わしい、超 A 級賞金首キルリアン・オーラ」を巡る三姉妹の旅にあるのだが、大筋に直接絡まないサブエピソードも読みごたえがある。無法の賞金稼ぎである美人三姉妹に加え、悪役、チョイ役、サオ役に至るまで、印象的なエピソードを組み込んでキャラ立てしており、隙が無い構成。
 エロシーンも手ぬかりなく、 250 ページに満たない小説とは思えないほど濃ゆい。タランティーノならこれで5時間撮れるだろう。イラストも悪くなく、表紙は「オッパイが出ていますよ」と普通に注意したくなるものの、陰影のくっきりした画風は世界観にピッタリ。
 クライマックスは血生臭さに満ちた凄惨なアクションだが、訪れる無常感の果てには、穏やかで救いに満ちた結末が待っている。端々にまで作者の西部劇愛を感じられる1作。

 


 

囚われの女子高生を救出せよ 宇宙刑事ヴォルクバン

宇宙刑事・巨乳・クトゥルフ!
オタク趣味盛り込み過ぎの快作

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エロ度  ★★★★
面白度  ★★★★
キャラ  ★★★★★
イラスト ★★★★★
斬新さ  ★★★★

【STORY】
 宇宙の辺境にある未開拓惑星・地球。宇宙犯罪組織のならず者たちが身を隠すこの星に、汎銀河連邦より腕利き(?)の宇宙刑事が派遣された。その名も銀河特捜ヴォルクバン! 地球での名は坂志狼。パートナーの葛城梨緒とのコンビネーションで、今日も宇宙犯罪組織の連中をブッ殺すぜ!
 そんな彼らの前に現れたのは、宇宙海賊幹部・ゴマンデス。かつてない強敵の出現だが、志狼は巨乳女警視・ディアナの魅力にメロメロだ! ディアナとの屋上ファックを梨緒に目撃された志狼、2人の間に走る亀裂。どうなる地球! どうなるヴォルクバン!
【解説】
 タイトルからもわかる通り、東映の宇宙刑事シリーズが下敷き。梨緒の服装はもろに『宇宙刑事シャイダー』のアニーだし、瞬間転送される装甲スーツ、高性能AIを搭載したバイクなど、小道具も雰囲気アリ。射撃が圧倒的に苦手という設定ゆえ、格闘スタイル重視で戦うヴォルクバンのバトルも見応えある。
 悪の組織は女幹部を使ってヴォルクバンを凋落しようとするのだが、その理由が「刑事を始末しても後任が来るだけ、ならば色仕掛けで仲間に引き入れておいたほうがよい」というもので、妙に理屈が通っている。田舎の辺境惑星に派遣された、めちゃくちゃ強いけど女好きな刑事相手にこれ以上の策はあるまい。
 エロ関連では、執拗なおっぱい描写が作者の特徴。おっぱいと触手、そしておっぱい、続けておっぱい。志狼の上司で宇宙人(巨乳かつ興奮すると母乳が出る民族)でもあるディアナや助手の梨緒だけでなく、冒頭で怪奇クトゥルー男に触手姦される女教師、上九一色村の宇宙奴隷センターに拉致された少女などのモブを含めて、登場するヒロインたちは巨乳ばかり。未遂で終わるとはいえ、この時代でニプルファックの概念を取り入れているのは特筆に値する。ちなみに作者は、士郎正宗がイラストを手掛けたことで話題になったエロクトゥルフ神話『邪神ハンター』を出海まこと名義で出している。

 


 

金田一流の事件簿 ヒ・ミ・ツの処女探偵日記

一切謎が解決しないし知りたくもならない
掟破り過ぎる推理小説モドキ

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エロ度  ★
面白度  
キャラ  ★
イラスト ★★★★★
斬新さ  ★★★★★

【STORY】
 上津京平は夢を見る。幼なじみで隣に住む女子高生、金田一流(かねだいちる)が見知らぬ男たちに蹂躙され、犯され、歓喜の表情を浮かべる夢を。夢の中の京平もそれを受け入れ、男たちに交じって一流を汚し続ける…。
 7月も終わりの夏休み。京平がアルバイトを始めたペンションになんの偶然か、一流と彼女が在籍する那央学院・護身部の面々がやってくる。女の子だらけのバイト先だが、京平を敵視する女生徒もいてパラダイスとは言いがたい。
 そんな矢先、女子高生密室レイプ事件が発生。真っ先に京平が疑われ、京平を敵視する護身部部員と、京平をかばう一流の間に軋轢が生まれるが、被害者は次々と増えていく。非日常の状況の中、京平と一流はお互いに強く結びつくことになる…。
 合宿は終わり、けっきょく密室レイプ事件の犯人もそのトリックも判然としなかった。一流は護身部のOB・新開地里美と会い、事件の真相についての推理を述べる。しかし里美はその推理の穴を突き、さらに女生徒の狂言説、京平犯人説、ひいては一流の証言ですらあてにならない事を指摘し、様々なトリック・犯人の可能性を挙げてみせる。すっかり混乱した一流に対し、里美は「あなたが好きな結論を受け入れればいいのよ。だって、今のあなたはしあわせなんだから。ね?」と笑うのだった。
【解説】
 大問題作の1つ。タイトルを見れば誰でも推理モノのミステリだと思うし、作者もそのつもりで(しかも、かなりの力を入れて)書いているようだが、話のキモとなる密室トリックと真犯人が未解決のまま終わっちゃ駄目だろう。あとがきを読む限りでは決して伏線だけ張って投げ出したわけではなく、作者の中ではちゃんと解答が用意されているようで、「事件はこれでおしまい。推理の時間です」だの「鋭意、続編を準備中です。もちろん読者の皆さまのご指示ご要望があってのこと」などと書かれているが、続刊が決まっていない段階で未解決のまま終わらせるなと言いたい。けっきょく続編は刊行されることなく、真相は闇の中である。つまり、「未だにトリックが明らかになっていない推理小説」でもあるので、驚異的な忍耐力を持つ読者の方は真相解明にチャレンジしてみてはいかがだろうか。地の文を侵食する口語体、やたら多い平仮名、ミスリードを狙っているのか無駄だらけでクドい描写の数々…といった文章自体の問題が多く、細部を見落とさないよう読み進めるのはかなりの根気がいる。
 物語自体も出来はよくない。7月末に大雪が降ってペンションが孤立無援になる状況を「異常気象」で済ませるのは、いくらなんでも適当過ぎないか? あまりにも無理やりなので、たぶんなんらかの形でトリックの真相に関わってくるのだろうが(そうでなきゃ怒るぞ)。主人公視点のキャラクターである京平が、あまり信用できないパーソナリティの持ち主であることが終盤で明かされるのも衝撃的だが、推理小説としての土台がしっかりしていないので裏切られたような不安感しか残らない。中身がアレ過ぎる作品にはよくあるパターンだが、イラストはキャラデザも含めて良い出来。表紙のカラーイラストはかなり印象が異なり、損をしている気もするが…。
 作者のペンネームで検索すると旧世紀アトモスフィアのホームページがヒットし、本作について触れられたページもあるのだが、“工事中”のまま放置されている。「ひょっとしたら小説本編で明かされなかった真相がここに!?」と期待してしまったが、空振りに終わった。メインコンテンツはエロゲーの愚痴レビューであった。

 


 

次元特捜EXERON(エグゼロン) 魔淫の侵略者

怪獣・人間・宇宙人を見境なしの大虐殺!
子供に見せられない特撮ヒロイン

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エロ度  ★★
面白度  ★★★
キャラ  ★★★
イラスト ★★★★★
斬新さ  ★★★★

【STORY】
 世界各地に突如現れる、謎の怪獣軍団。恐るべき怪獣たちの侵攻に立ち向かうため、敵性地球外生物駆除隊・略して敵駆(テック)が結成された。テック隊員・梨菜子は宇宙ステーションでの作業中、謎の事故にあう。混濁する彼女の意識に、銀河連邦の特務執行官を名乗る宇宙人・エグゼロンが語り掛ける。銀河のテロリスト・リプラトラ星人を追ううちに異次元へと飛ばされたエグゼロンは、梨菜子を特異点として身体を維持することができるのだという。
 意識を取り戻した梨菜子は地上での勤務に回されるが、リプラトラ星人の操る巨大怪獣が出現。梨菜子の乗る戦闘機は撃墜されてしまうものの、突如まばゆい光が彼女を包む。そして怪獣の前に降り立ったのは…身長50メートルの銀色の巨人! 巨人はまたたく間に怪獣を退治。しかしリプラトラ星人の魔手は、すでにテック隊員達にも伸びていた…。
【解説】
 『ウルトラマン』シリーズを彷彿とさせる巨大ヒロインもの。パロディ要素はほとんどなく(章タイトルが『ウルトラセブン』のサブタイトルのもじりになっていることくらい)、怪獣・宇宙人の脅威に立ち向かう防衛組織隊員の奮闘を真正面から描いている。エロゲ原画の実績もある十羽織ましゅまろのイラストは素晴らしく、カラー映えする表紙は見事。エグゼロンのデザインもツボは抑えており、銀の体色に赤い線で模様が施され、股間部にはその模様で女性器マークが描かれている。カンペキだ。
 難点はとにかく暗くて救いがなく、エロシーンも陰惨なこと。敵性宇宙人・リプラトラ星人は映画『ヒドゥン』を思わせる寄生型で、主人公の恋人も後輩も、親しい人はみな寄生されてしまう。頼みの綱のエグゼロンは下等生物たる地球人の命などなんとも思っておらず、怪獣退治の巻き添えで多数の死者を出す始末。エロシーンは寄生された男女の乱交・レイプばかりだし、ラストは植物人間になった恋人にまたがり、主人公が泣きながらセックス。気の毒過ぎてチンポも黙祷。そもそも、せっかく巨大ヒロインという題材を取り扱っておきながら、変身後のエロシーンが一切ないのはどういうわけか。銀色ピッチリスーツの巨大ヒロイン vs 触手怪獣のカラミの1つでもあれば、その筋で長く語られる伝説の 1 作になっていたのでは? 惜しい。

 


 

精霊界のお騒がせ娘 ミークにおまかせ!

時代を考えても古すぎる
おまかせできない旧型ラブコメ

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エロ度  ★★★
面白度  ★★
キャラ  ★★
イラスト ★★★
斬新さ  

【STORY】
 予備校生・拓也は、最近とにかくついていない。彼女の杏子にはふられるし、ダブル役満は振り込むし、パソコンはウイルスに感染するし…。助けを求めてボディコン霊能力者・綾香の元を訪れた拓也は、守護精霊のロリ少女・ミークと出会う。ミークによれば、1週間のあいだに4人の不幸な女の子を救わなければ拓也は一生ついてないままだし、チンポから精液も出なくなるというから大変だ。 
 不幸な女の子を探しては、お悩み解決のため奮闘する拓也。野外SEXでしか感じない女子大生は、見晴らしのいいラブホの窓際で犯す。よく痴漢に会うという女子高生は、憑りついている淫魔をSEXで退治。杏子ともなんだかんだあり、SEXでよりを戻せた。よかったね!
 しかし、どうしても最後の1人が見つからない。このままではミークも消えてしまう…。いや待てよ、ということはミークも不幸な女の子では!? というわけでミークをSEXで慰めたところ、なんとかなった。
【解説】
 心の底から「しょうもない」と言い切れるストーリー。無理やりエロ展開に持っていくためだけに作られたような設定もアレだが、キャラ造形に物語展開、すべてに古さを感じる。『GS美神 極楽大作戦!!』ですら1991年の作品なのに「ボディコン霊能者」て。杏子と拓也のデートは東京ドームの巨人戦だし…。1998年の当時でも、相当古かったのではないか。守護精霊というキーワードがかろうじてファンタジー要素を醸し出しているが、「ミークは守護精霊の会社をまわったが、適正が無いのかどこでも採用されず…」というファンタジーのカケラもない一文に撃沈される。駄目だコリャ。

 

 

 以上です。ナポレオン文庫はほとんどがアマゾンのマケプレで¥1で買えるからよいですね。この18作以外にも凄いのがあって凄いので読んでね。(了)
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【特集】25年前のエロラノベレーベル「ナポレオン文庫」の名作珍作レビュー18選(前編)

 

 1980年前後生まれの性少年のポコチンを熱くした「ナポレオン文庫」から、幅広く18作品をピックアップ。元は文学フリマに出品した同人誌『二級河川15 古本仁義』掲載原稿で、同誌がboothショップで早々と売り切れてしまったため、ブログでも掲載します。(注:ド下ネタです)

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【概要】 

 ナポレオン文庫とは、20年以上前にフランス書院より刊行されていたジュブナイルポルノ…いわゆるエロラノベのレーベルである。漫画やビデオより比較的購入しやすい(小説には成人指定が無いため)、文庫ゆえ左手だけでページをめくれる(右手で別の事が出来る)等の利点から、オカズに悩む男子の強い味方であった。90年代のオタク中高生は皆、ナポレオン文庫か電撃姫のエロゲー紹介ページか遊人の『ANGEL』でシコり倒していたのである(個人の見解です)。現在でもそこそこの数のレーベルがあり、多種多様なシチュエーションで性少年のポコチントレーニングに貢献するエロラノベだが、ナポレオン文庫こそがその元祖と言えるだろう。商業的に出版された最初のエロラノベは、1980年代後半の富士見文庫から出ていた倉田悠子(稲葉真弓の変名)作品辺りと思われるが、レーベルとして本格的に刊行されたのはナポレオン文庫が初である。たぶん。ファンタジーやSFはもちろん、ミステリに時代劇、特撮パロディに格闘モノといった狭そうで実際狭いジャンルの作品群の中には、現在でも活躍する著名作家のタイトルも混じっている。
 今回はナポレオン文庫レーベルの中から、できるだけ広いジャンル、多くの作家を紹介できるよう、18作をセレクトした。そもそもこの記事は古本特集の一環として企画された「1000円(税込)の予算でどこまでシコれるか? 第1回・古エロ本シコリンピック~!」というものだったが、「クソすぎる」「そんな記事と一緒に載る身にもなってほしい」「Webチンカス」等の抜本的路線見直し要求が挙がったため、個人的に「ブックオフ108円コーナーに並ぶ安エロ本」の代名詞でもある本レーベルを取り上げることとなった。以下、基本的な書誌情報に加えエロシーンのエロさ(エロ度)、読み物としての面白さ(面白度)、キャラクターの魅力(キャラ)、イラストのエロさ・可愛さ(イラスト)、物語の斬新っぷり(斬新さ)の5つの視点から評価し、あらすじ・レビューと併せて紹介している。これらの作品は今でもわりと簡単に買えるので、興味を持たれた方は実物をアレしてみてはいかがだろうか。

※書誌情報については書名にAmazonリンクを貼っています。

-もくじ-

  • 影魔王ザナック
  • ロックン☆ビーナス
  • 吸血学園  ヴァージン・クライシス
  • TOKIO機動ポリス 美少女隊員、出動せよ!
  • トキメキ☆レッスン 麻由のきゃぴるん初体験!
  • セーラー・バニーX ウサ耳女子高生♥あぶない体験
  • 格闘少女☆麗矢 バトル・オブ・セーラー服
  • テレパラサイト☆コール 小悪魔たちの囁き
  • リバース ドリームダイブで学園を救え!
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殺人鬼大集合!悪魔のいけにえのはらわたのえじきのしたたり―『Dead by Daylight』

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 PS4版『Dead by Daylight』デッドバイデイライト(以下『DbD』)が面白いのでそればっかりやっている。もう夢中。時間強盗。
 
 『DbD』はホラー映画をモチーフにした非対称型対戦ゲーム。殺人鬼さんチーム(1体)と生存者さんチーム(4人)に分かれ、暗い森だの廃工場だの精神病院だのといった「いかにも」な舞台で追いかけっこをする。似たようなゲームに、モンスターとハンターに分かれて戦う『Evolve』がありましたね。『Evolve』のモンスターはハンターにあっさり狩られちゃったりしますが、『DbD』の殺人鬼は圧倒的に強く、生存者は逃げ回ることしかできない。
 殺人者側の目的はもちろん生存者全員をブチ殺すことで、もう少し詳しく書くと、ナタだのナイフだのでやっつけた生存者を肉フック(『悪魔のいけにえ』で出てきたアレ)に吊るし、邪神だかなんだかへの生け贄にすること。いっぽう、生存者側の目的は、あちこちにある発電機を一定数(参加生存者数+1台)修理し、脱出ゲートを作動させること。殺人鬼と生存者、両者はスペックも目的もぜんぜん異なるため、さまざまな駆け引きが生まれる。

 
 『DbD』をどんな人にオススメしたいかというと、まず「スリル溢れる協力型マルチプレイ」を楽しみたい人。非力な生存者も熟練のサバイバーになれば、自らおとりになったり、肉フックや罠を破壊工作したり、殺人鬼を翻弄してやることができる。で、「圧倒的な強者になり、オンライン対戦で無双」したい人にも。殺人鬼側も慣れればそれこそホラー映画のように哀れな生存者をもてあそび、調子こいたアホどもをブッ殺して回ることができる。まあ実際はそんなにうまくいかないというか圧倒的に生存者有利なバランスなんですが、ホラー映画でも最終的には生存者が勝つことが多いし、そこは、ね。
 もちろん純粋に「ホラー映画が好きな人」にもオススメしたい。先ほども言った通り、シチュエーションはスラッシャームービーそのもの。殺人鬼も「チェーンソーを振りまわすマスク男」「マッドドクター」「デブのピエロ」「狂った看護婦」などそれっぽいのがたくさん。また有名ホラー映画とコラボしており、『悪魔のいけにえ』からレザーフェイス、『エルム街の悪夢』からフレディ、『ハロウィン』からブギーマン(マイケル・マイヤーズ)、『SAW』からジグソウ(の後継者)が作中の生存者たちとともに登場。それぞれの特技を生かした活躍をしてくれる。レザーフェイスはチェーンソーを振り回して一撃ダウンを狙えるし、フレディは「夢の世界にいるから不可視」という卑怯臭い能力を持つ(相手を眠らせないと攻撃できないという弱点もある)。ちなみに『13日の金曜日』のジェイソンは未登場ですが、すでにジェイソンになって追いかけっこする『フライデー・ザ・サーティーンス ザ・ゲーム』が発売されてるのが原因かもしれないです。
 2016年に配信されたゲームということもあり、すでにあちこちで紹介されているので詳細については各種ゲームサイトなどご参照ください(説明めんどいので)。

www.gamespark.jp



 『DbD』はチュエーションだけではなく、ゲームシステム自体も実によくホラー映画とマッチしている。
 基本的に生存者は殺人鬼と対峙しても勝ち目はないのでステルス行動が基本となるが、発電機の修理には時間がかかり、かつ修理中は大きな音も出てしまうので殺人鬼に気づかれやすくなる。また、肉フックを破壊したり、宝箱からアイテムを探したりする際にも大きな音が出る。積極的に行動すればするほど見つかりやすくなるが、かといって隠れ続けていても状況は好転しないというジレンマをどう解消するかが生存者側のポイントなわけです。なんで生存者はじっと隠れていないのか、わざわざ危険なところへ向かうのか、みたいなホラー映画によくあるツッコミを解消しております。ふつうの対戦ゲームだと、“戦う理由”として「イデオロギーの衝突による戦争」だの「単なるスポーツ」だのが設定されてたりしますが、「純粋に殺したいから殺す」「殺されたくないから逃げる」という本作は大変いさぎよい。100点!


 生存者の誰かが肉フックに吊られた場合、残りの生存者たちは助けに行くか、無視して発電機の修理を優先するか判断しなければならない。殺人鬼は肉フックの前で陣取っていれば助けに来た生存者を返り討ちにできる可能性もあるが、その間にどんどん修理を進められてしまうかもしれない。で、ここからさらに「生存者はわざと大きな音を立てて注意を惹く」だの「殺人鬼は罠を仕掛けていったん肉フックから離れるフリをする」だのいろいろな展開に繋がっていくわけです。相手の裏をかく心理戦の様相を呈すこともあれば、純粋なアクションの腕前(相手から逃げ切る/追い詰める)が問われる場面もある。
 生存者側はもちろんお互いに協力したほうがメリットが大きいが、発電機の修理がもうすぐ完了しそうなときはあえて放っておく手もある。仲間3人が犠牲になっても、自分1人が脱出できればポイントは大量にゲットできる。脱出ゲートが空いてあとへ逃げるだけ、という段階で肉フックに吊られてしまったときの絶望感! そこへ仲間が助けに来てくれた時の安心感! そしてその仲間もやられてしまった時のダブル絶望感! 他の仲間がさっさと脱出してしまった時のトリプル絶望感! この辺り、ホラー映画という題材とゲームシステムがぴたりとハマっていて良いです。120点。

 

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 とまあこういう殺伐ゲームです。おれはたいてい殺人鬼側でプレイしてますが、肉フック直前でに逃げられたりするたび「ウォッ」「しなす」「愚民」などと叫んでしまうくらいエキサイトするので、本田翼くんがコレをプレイするのを心配するファンの気持ちは重々理解できる。
 「敵」「悪役」になって思う存分暴れまわりたいという欲求は、誰しも、とは言わないがわりかし多くの人が持っているのでは? これまでも『Evolve』だの本作とコラボもしてる『Left 4 Dead』だの、モンスターやゾンビを操作して人間をキュッとやったりするゲームはあったけど、アクション下手が敵側でプレイしてもボコボコにされるだけでいまいち爽快感がなかったんですよね。でも、『DbD』の殺人鬼は強い! そしてわりとカワいい! PS4版ならチャットで煽られることもないし心も折れにくい(「ウォッ」「しなす」「愚民」とかは叫ぶようになる)。
 『DbD』、大幅なアップデートVer2.0が配信され(PS4版は近日中の予定)、キャラがあらかじめパーク(パッシブスキルみたいなもん)を所持していたり、チュートリアルが追加されたりと初心者でも入りやすくなるような調整がいろいろ施されております。みんなも人狩りいこうぜ。

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