ジャッカルの日

漫画・ゲーム・映画・怪奇についてバカが感想と考察を書く

【告知】第四回金沢文学フリマに関係ありそうでしてないかもしれない話

 今週末、5月27日(日)開催の金沢文学フリマでは、「えー07」金腐川宴游会で同士が印刷物を出店しております。金沢の文学フリマは良いですよ。明らかに古本市と間違えて訪れているおとっつぁんやら家族連れやらも来ているしアットホーム。会場の「ITビジネスプラザ武蔵」から2分歩けば「近江町市場」に着くんですが、ここはアホほど寿司屋があってうめぇしやべぇので金沢まで遠征してきた皆さまは是非。正直なところ、回転する店でも値段はそれなりのそれなりですがうめぇです。

 


 

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 で、我々は今回、ファミコンネタのサークル誌「二級河川19 ファミコン無頼」を新刊として出しております。文学じゃねぇだろ、というご指摘には「HAHAHA」以外の反応を返せませんが、文フリはわりと懐が広いので許されております。新刊については前にもなんか書いたので下を見てみてください。

 

meattrain.hatenablog.com

 

 この19号では「徳間書店(ファミマガの出版社)が出したゲーム縛りクロスレビュー」とか、「ファミコンのカセット(カートリッジ)の形状の研究」とかを特集しております。念のため言っておくと、誌面で紹介しているゲームはすべて購入してます。当たり前だよね! 中古のファミコンソフトを今さら購入してもメーカー売り上げには貢献できませんが、ネタとして使わせてもらう以上の最低限のアレです(プレイに関しては互換機を使用してます)。

 真面目な話、ファミコンゲームは今だからこそ一次情報――実際に購入して、プレイしてみて初めてわかる情報が貴重なんですよ。前号(二級河川18号)では「『燃えろ!プロ野球』を県内の中古屋から買い占めてみる」という、多大な労力を完全に間違った方向に費やした記事がありますが、今後もこうした“生きたムダ情報”を発信していけたらよいですね。

 

  で、唐突ですが下の画像は、今回の19号でボツにした(間に合わなかった)記事、「味があり過ぎるファミコン説明書10選」で取り上げるつもりだった『鉄腕アトム』のキャラ紹介ページ。

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 アトムとウランが原作そっくり(トレス?)かつ異様にテンション高いのに比べ、その他のキャラの手塚タッチ皆無さも良いですね。手塚治虫原作のゲームで「スパイダー」って名前のキャラを出すのはいろいろ間違ってるだろ。

 

 あと『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRIANGLE』 の説明書。世紀のクソキャラゲーとして有名な本作ですが、ストーリーも完全に虚無でよかったです。

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 「たっちゃん」「タッちゃん」で表記がぶれてたり、「三人」は漢字なのに「いっぴき」は平仮名だったり、3枚目の写真のキャプに「写真1」と書かれてたりとかはこの際些細な問題です。野球+青春恋愛ドラマの傑作である『タッチ』を、野球ゲームでもテキストアドベンチャーでもない探索型アクションとして出す根性は本当にすごい。

 ゲームの中身に関して解説しているサイトや書籍はいくらでもあるんですが、「説明書」に注視してるとこってあんまり見ないんですよね。純粋に入手の難しさもあるでしょうが。10選と言わず30くらいババっと載せたら面白いかもしんないですね。オチは特にないですが第四回金沢文学フリマ、よろしくお願いします。

c.bunfree.net

 

【特集】「二級河川」第二十六回文学フリマ東京・新刊とバックナンバーのまとめ

 第二十六回文学フリマ東京(5月6日)に出る新刊「二級河川19 ファミコン無頼」の紹介~ッ! ついでにバックナンバーについてもおれ目線から解説します。宣伝すっぞ! 宣伝! 既刊もこんなに溜まっちゃってるんだから、もう…。

 

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 おれは「金腐川宴游会」というサークルに参加している。ここは石川県・S高校のコンピューター部のOBが中心となって作った会で(おれはS高校出身でも石川生まれでもないが、参加させて頂いている。なんでだろう)、たまに集まっては泥酔したり記憶を無くしたりするのをおもな活動としている。会の発足当時はインターネットというものは存在せず(これは嘘。すでに普及していた)、会員間で連絡を取る手段も皆無だった(これは嘘。実際に顔を合わせたり電話等でコミュニケーションを取っていた)。そこで生まれたのが会員の“現状”を報告するため、自分がいまハマっていることやおすすめの漫画・CD・ゲームなどを紹介するサークル誌、その名も「二級河川」である。

 おれみたいな門外漢が参加している時点で自由なサークルであり、「二級河川」も各人が好きなものを書いて好きに出している。漫画、映画、文学、ゲーム、音楽、スポーツ、歴史、軍事、グルメ、街ネタ、鉄道、プラモ…ジャンルは何でもあり、なにかしらのテーマを決めてそれに沿った原稿を募集することもある。各人の好き放題を総合した結果「雑誌」として文学フリマに出品、ぶっちゃけ全然文学ではないものの、有難いことにそこそこの好評を博している。

 

 前置きはともかく、新刊の「二級河川19 ファミコン無頼」と、そこそこ在庫があるバックナンバーについて紹介していこう。

 

■二級河川 1号~12号

・初期の「二級河川」は有機物のどろどろしたスープのようなものから発生しました。知性は無く、本能的な欲求に従い集団で狩りを行っていたと推測されます。

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↑左から11号、7号、8号、12号、4号、3号、6号、10号、1号、2号、9号、5号の順。(小さい個体は別冊)

 

二級河川13
テーマ:郷土の偉人と珍スポ

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・第一回文学フリマ金沢(2015年)に出品。我々が文学フリマで活動するきっかけであり、初めて対外を意識しつつ作った1冊。こーいうイベントに出るのは初めてのメンバーも多く、この号は調子に乗って刷り過ぎたのでわりとエラいことになった。
・12号までの自選集「二級河川リサイクル」も同時刊行。これも刷り過ぎてエラいことになった。
・テーマは「北陸ネタ」。巻頭は金沢出身のライトノベル作家、鷹山誠一氏(代表作『百錬の覇王と聖約の戦乙女』が2018年7月にアニメ化)。インタビュアーとして、鷹山氏の元クラスメイトである当会のメンバー3人が好き勝手な事を聞いている。普通、「お前のキャラの名前はカタカナばっかりで覚ええにくい」みたいなこと作家相手のインタビューで言います?


二級河川14
テーマ:宗教漫画

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・新刊として出して以来コンスタントに売れ続けている1冊で、たしか3刷まで出ている(現在は在庫ゼロ)。表紙のカッコよさと手に取りやすさは随一では?
・宗教漫画ってこれだけバラエティに富んでいるのか~、と作り手側からも目からウロコだった。おれは巻頭の「宗教漫画クロスレビュー」のみ参加。あと「宗教マンガ裁判」記事用に『蓮華伝説』(つのだじろう)を提供している。あまりにイカれた内容だったため、同記事の担当でつのだファンの岸本くんがツラそうだった。本当にヤバいよ、これ。


二級河川15 古本仁義
テーマ:古本

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・古本好きの豪華ゲスト陣に協力を仰いだ1冊。内輪で固まりがちな当誌にとっては新鮮でした。
・持ち寄ったサイン本で役を作る「サイン本ポーカー」は、唐沢俊一がかつて漫画でネタにしていた“有名人ポーカー”に倣った企画。「同じ罪状で捕まった人フォーカード」だの「CDを出したことのある漫画家3人と漫画を描いたことのあるミュージシャン2人のフルハウス」だの、無限に役を作れるのでみんなもやってみよう。
・サブタイトルが付くようになったのはこの号より。「古本仁義」は3秒で決まったが、以降は案を持ち寄ってコンペするなど、皆でわりと真面目に考えている。アウトロー感のある単語が多い。
・13、14号ではあまり参加できなかったぶん、個人的にがんばった号。全体の編集を担当し、「サイン本ポーカー」の構成も行った。おれ個人の原稿はスケベライトノベル「ナポレオン文庫」レビューと「やまがたすみこのアニソン」話。どちらもお気に入り。


二級河川16 翔べ! グルメうらごろし
テーマ:食

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・新刊としてはけっこうな売れ行きだったので、皆「この方向性でイケる」と確信した1冊だったように思う。

・シンプルかつ完璧な表紙。画像のやきとり重は「やきとりの名門 秋吉」のもの。秋吉は昔、メンバーでよく通っていた店。最近でもたまに行くが、胃がアレなのでかつてほどの本数は食べられない。
・巻頭メインはグルメ漫画特集。巻頭の「グルメ漫画不完全リスト」は今見ても力作だが、この号の刊行後も『人魚姫のごめんねごはん』『野原ひろしの昼メシの流儀』『ぺろり!スタグル旅』などバンバン新作が登場したため、現在ならさらに30作くらいは追加されそうだ。
・おれ名義の記事は2本。「読んだ気になれる!『美味しんぼ』全話100文字レビュー【前編】」を書くために休日は漫画喫茶に通い詰めだった。当初は全巻やるつもりだったが、2時間ではどんなに頑張っても3~4巻分を書くので精一杯だったので早々に諦めました。途中からデタラメを交えて書くようにしたらスピードは上がりました(資料的価値はゼロになった)。アホほど文字を詰め込んでいるのは往年のサブカル雑誌「GON!」リスペクト。
・もう1本の「バターコーヒーで10kgダイエット」、記事内に完全に無駄なノイズがあるが、この頃L・P・ハートリーの『ポドロ島』という怪奇小説を読んで感銘を受けたため、それに影響されている(「全然ちゃうやんけ」という指摘は甘んじて受け入れます)。


二級河川17 動物番長やらずぶったくり
テーマ:動物

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・動物というテーマはかなり早くから決まっていたが、作成中に『けものフレンズ』が大ヒット、メンバー内でも流行っていたのだが、それをダイレクトに反映させる余裕がなかったのが少々惜しい。表紙は『子猫物語』のかなり忠実なパロディなのだが、80年代以降生まれの読者にはまったく通じていなかった。サブタイトルと絵柄とデザインと題材の消化不良っぷりがすごい。
・「動物ネタなんて思いつかねえよ」というメンバーがほとんどだったが、結果的に見れば7割くらい動物関連の記事で埋まっている。ちなみに毎号のテーマは、新刊出した打ち上げの席でなんとなく決められています(泥酔した脳で)。
・おれは「終わってるどうぶつ漫画10選」という記事を書いたが、タイトルはぶっちゃけフカシであり、『BEASTERS』『ぶんぶくたぬきのティーパーティ』の2作を紹介できただけで満足。


二級河川18 地獄・極楽懐ゲー攻め!
テーマ:レトロゲーム

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・表紙は「ファミコン通信」創刊号と、ナムコの「ワルキューレ」と「サンドラ」のパロディ。表紙案として、担当の村長氏からは採用されたものよりも少しエッチなものが挙がってきたが、わりとエッチだったのでエッチじゃないほうに決まりました。
・サブタイトルも含め、あちこちに『ウルトラファイト』ネタが仕込まれている。
・この頃『ストバスヤロウ将』という誰も知らないバスケ漫画&ゲームに執心だったので、それについて書いたのが「『明日やろう』はストバスヤロウ」。なんで『ストバスヤロウ将』にここまで固執していたかは忘れた。今、この記事を読み返すと少々手厳しすぎるようにも思うが、マジでポリアンナがよかった探しを笑顔で拒否するレベルの原作なので…。
・逆噴射聡一郎文体のパロディで『所さんのまもるもせめるも』を褒めちぎる記事も書いた。出来はともかく、あまりにも書きやすかった&多少の誤字は校正しないで済むので便利だなと思いまんた。

 

二級河川19 ファミコン無頼
テーマ:レトロゲーム

 

・はい、こちらが第二十六回文学フリマ東京の新刊ッッッ!!!

 

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・まだまだ語りつくせてねぇ、ということで2号連続のゲームネタ(おれ自身は前号で語りつくした)。今までの会誌の中でももっとも分厚い大ボリュームの1冊。
・巻頭特集は「徳間書店ファミコンゲームの世界 禁断のクロスレビュー」。ゲーム雑誌って人さまンとこの商品を偉そうにコキ降ろしてるけど、お前らが作ったゲームはさぞかし面白いんでしょうなァ~~~? といういきさつで(だったかとうかは忘れたが)、徳間書店のファミコンソフトクロスレビューという企画をやった。なんでアスキー(KADOKAWA)にしなかったのかというと、そっちは普通に良作を出しているので…。プレイ時間が長めのゲームも多かったし(ツクール系とか)。そういうわけで表紙は徳間書店のゲームの主要キャラたちです。いろいろと大丈夫か。

・ファミコンネタを中心に資料性の高い記事を収録。バンダイのファミコンカセット(『キン肉マンマッスルタッグマッチ』『ドラゴンボール 神龍の謎』)はなんであんなに丸みを帯びていたの? アイレムの『魔鐘』や『スペランカーⅡ』のカセットについてた発光ダイオードはなんだったの? 等のカセット形状のひみつが丸わかりの貴重資料写真が満載「カートリッジ・オリジナリティ」。「マリオ3のワールド8の飛行船はパタパタの羽でクリアする」、「ゲゲゲの鬼太郎妖怪大魔境の2面のボスに子泣きじじいを使ったら、高い位置で固定されてしまい攻撃が当たらなくなったことがある」など、人生の役に立たないあるあるネタを詰め込んだ「ファミコン256連打」など、お役立ちor役に立たないがヒマつぶしにはなる記事が満載なので見てみてつかあさいね。

 

 ■せんでん

 13号以降の「二級河川」バックナンバーは、BOOTHで通販を始める予定。在庫減ってくれ~! コタツ布団押し入れにしまいた~い! 送料等でちょい割高になってしまい申し訳ないのですが、通販では特典ぺーパー等のおまけを考えております。

 もちろん、イベント参加は今後も続けます。イベント会場では1冊500円の特別価格で販売しているので、機会があればぜひ足を運んで頂ければ! おれは非常に接客が苦手なので基本『遊戯王デュエルリンクス』をプレイしながらの対応になりますし、手札事故で舌打ち等もしょっちゅうですが、他のメンバーは気さくに受け答えしてくれますのでごあんしんください。

 

kinyuukai.booth.pm

【特集】SCPの有名どころを読み終えた人のためのおすすめ20選

 最近、奥さんが「SCP財団」を読み始めてハマっているらしい。SCP財団というのは、ざっくり言うと世界中の人が考えたこわい話が読めるサイト。知らない人はロースおじさんの解説でも読んでください。

 

blog.goope.jp


 で、殿堂入りのオブジェクトは一通り読んだので、他に面白いものはないかと聞かれたのだが、

・正確なナンバーや記事タイトルを思い出せなかった
・本当に「初心者」向けかどうか迷った
・できるだけバラエティに富んだものを勧めた方がいいんじゃないかというスケベ心

等の理由でパッと挙げることができなかった。痛恨の極みである。というわけで、「前知識は最低限あればいい」「“オススメSCPまとめ”みたいなのであまり名前を見ない」「個人的に好き」等の視点で選んでみたのが、以下に挙げる20作です。おれも全SCPを読んだわけではないのでまだまだ面白くて読みやすいSCPはあるだろうが、ご参考までに。

 

【パッと読める短編2本】

 まずは5分で読めるキレのいい短編を。

 

●SCP-1152「アライグマ」 Safe

http://ja.scp-wiki.net/scp-1152

 人間並みの高い知性を持ったアライグマ。手先の器用さも人間並みで、体重は75kgもある。どうやら鬱の兆候を示しているらしいが…。文章だけでは解説不能な1作。

 

●SCP-1883「いえいえ他に目的なんてありません、あくまでゲームです」 Euclid

http://ja.scp-wiki.net/scp-1883

 様々な指令を出してくる、携帯電話用のゲームアプリ。指令は「太陽に挨拶する」「お墓に供えてあるものを食べる」などわけがわからないものばかりで、危険なものも含まれるが、なぜか実行したくなってしまう強制力を持っている。2017年8月、インドで「青い鯨」というマインドコントロールアプリが登場し自殺者まで出す騒ぎになったが、このオブジェクトを思い出した人も多かったのでは?


【タイトルホイホイな3本】

 リストを眺めていて「なにそのタイトル?」と思って読んでみたら良かった3本。最近は本部も日本支部も、全体的にちょっとタイトルに凝りすぎな感はありますが。


●SCP-2934「マジかよ、ンドレッツ・ゲガ最低だな」 Safe

http://ja.scp-wiki.net/scp-2934

 何かしらの呪術的、科学的な改造が施された白人女性の遺体。周囲の人間に「ンドレッツ・ゲガ」なる中年男性が出てくる夢を見させる能力を持つ。夢の中のンドレッツ・ゲガは、非常に親切で魅力的な人物として描かれるのだが…。読み終えたあとの感想はもちろん「最低だな」!


●SCP-1972「アバズレ&オマワリ」 Euclid

http://ja.scp-wiki.net/scp-1972

 ヘラジカのような頭と多数の触手を持ち、流ちょうなフランス語を話す人型物体・SCPー1972ーA(アバズレ)と、高温のプラズマ光線を放つ金属飛行物体・SCPー1972ーB(オマワリ)。アバズレはその辺で出会った人に性行為を持ちかける習性があるが、誰もその奇妙な見た目に嫌悪感を抱かないらしい。オマワリはアバズレへの敵意を隠しておらず、アバズレを殺すために財団をたびたび脱走し、多数の死者も出ているという。この両者の関係は? ラストの一文が鮮やか。

 

●SCP-3263「魔法の才ある者たちのための私立ヘッジワース学園」 KeterSafe

http://ja.scp-wiki.net/scp-3263

 他の人間とはちょっと違う能力を持つ少年少女たちの前に、突如現れる「私立ヘッジワース学園」の学園長からの手紙。「魔法の才ある君たちには、ぜひ学園に来てその能力を伸ばしてほしい」との内容で、手紙に同梱されている木製スイッチを押すと、とある城跡にワープする。この城がどうやらヘッジワース学園らしいのだが…。
 この報告書はアーカイブ版と改訂版があり、改訂版でヘッジワース学園の実態と正体が明らかになる構造。


【日本支部の名作4本】

 日本支部の傑作は「評価の高い記事」の上位を見ればだいたい把握できるのだが、個人的に「日本だなあ」と思う好きな4本を。


●SCP-439-JP「ホームラン量産法」 Keter

http://ja.scp-wiki.net/scp-439-jp

 ある手順を踏むことで、必ずホームランが打ててしまうおまじない。これがなぜKeter(それも人類滅亡を引き起こすレベル)に分類されるのか? 星新一や筒井康隆のキレのいいショートショートのような読後感。

 

●SCP-818-JP「えらいねぇ~」 Keter

http://ja.scp-wiki.net/scp-818-jp

 何をやっても「えらいねぇ~」と褒め、甘やかしてくれる老夫婦(Twitterの「生きているだけで褒めてくれるbot」みたいだな)。一見、無害なおじいちゃんおばあちゃんが“人知のスケールを超えた狂気”を見せてくれる。

 

●SCP-1283-JP「踏切のむこう」 Euclid

http://ja.scp-wiki.net/scp-1283-jp

 死別した親しい人と再会できる踏切。現れるのは生前の記憶を引き継いだ故人そのもので、しばらく経つと天使のような幼児たちのお迎えに囲まれ、遮断機が上がるとともに姿を消す。これで泣き系の邦画が1本作れそうな、なんともロマンチックな踏切なのだが、補遺の最後の一文が心肝寒からしむる。

 

●SCP-938-JP「からばこ」 SafeEuclid

http://ja.scp-wiki.net/scp-938-jp

 3段階のパスワード入力を経てようやく読めるようになる報告書。このオブジェクト自体の収容手段も非常に厳重で、日本支部内でもトップクラスの予算と人員がかけられていることが伺える。果たして“収容”されているのはどちらなのか? 収容することで収容が不可能になる矛盾。アプローチはまったく異なるが、SCP-789-JP「メビウスの輪ゴム」の論理的恐怖に近いものも感じる。

 


【パルプで悪趣味な6本】

 読んでも「感動」は決して得られないだろうけど、奇妙なアイデアとちょっぴりの悪意が心地よい中~短編たち。

 

●SCP-823「恐怖のお祭り」 Euclid

http://ja.scp-wiki.net/scp-823

 グロテスクな殺人事件が度々起きる、廃墟となった遊園地。記事に挿入される廃遊園地の写真がまた不気味で、ホラー小説的なインスピレーションがはかどる。※2020年11月追記 最新版ではかなりの写真が削除されてしまった。
 もともとSCPは「ネットで見た怖い画像にストーリーを付けちゃおうぜ」的な始まりをした(らしい)ので、このえげつない報告書もそうした経緯で書かれたのではなかろうか。そういう意味ではこれもまたSCPの原点かもしれない。

 

●SCP-089「トペテ」 Euclid

http://ja.scp-wiki.net/scp-089

 牛の頭と翼を持つ人型生物の姿をした、3メートルほどの土製の像。
 SCPは主観性を排した「報告書」のていで書かれているため、独自の用語が多く、文章も無機質でやや難解なものが多い。最初のほうは読んでも意味不明だが、後半まで読み進めてようやく正体がわかることがほとんど。最後まで読んで、前半に書かれていたことの詳細が判明してぞっとする…というパターンには美しさすら感じてしまう。このオブジェクトなど、報告書ならではの淡々とした描写が効果をあげている例の1つだと思う。元ネタはとある有名な悪魔と思われる。

 

●SCP-2126「おばあちゃんから来た手紙」 Safe

http://ja.scp-wiki.net/scp-2126

 何の変哲もないおばあちゃんからの手紙だが、これを読んでしまった者は…? 非常にえげつない「起きる異変」と「手紙の内容」との関連性が実に絶妙かつ微妙で、短いながらも印象深い1本。一体全体どうしてこうなってしまったのか。

 

●SCP-2030「ワ ラ ヒ ワ タ ノシヒ」 Keter

http://ja.scp-wiki.net/scp-2030

 悪夢のようにグロテスクな状況が次々と巻き起こる、ドッキリカメラ系コメディ番組。配信サイトやビデオ屋の陳列棚に突然現れるため完全収容は困難。SCP-993「ピエロのボブル」みたいな連中が作ってるのだろうか。

 

●SCP-1875「アンティーク・チェス・コンピュータ」 Euclid

http://ja.scp-wiki.net/scp-1875

 19世紀に作られた自動チェス打ちマシン。天才として名高かった、とあるチェス棋士の双子の娘の脳を使用している。また、チェスの駒は彼女らの人骨で作られている。なんらかの手段で無線LANに繋がっているのか、財団職員宛のメーリングリストに一斉メールを送信するなどの異常性を発揮。このメールに添付されていた画像ファイルは、見ただけで幻聴・幻視や自傷行為を引き起こす。

 

●SCP-1981「演説中に解剖されるロナルド・レーガン」 Safe

http://ja.scp-wiki.net/scp-1981

 タイトル通りの映像が収められたビデオテープ。再生するたびに、毎回異なるスピーチ(内容は完全に意味不明)をするレーガンが少しずつ解剖されていく。SCP-2491「毎日卵を300個産むショーン・コネリー」という、より悪趣味で意味のわからないオブジェクトも。

 


【スティーブン・キングな2本】

 パルプで、かつそこそこのボリュームがある2本。これ膨らませて1冊書けるんじゃね? ってくらいの秀逸なアイデア。

 

●SCP-3008「完全に普通の、ありきたりな古いイケア」 Euclid

http://ja.scp-wiki.net/scp-3008

 見た目は普通のイケア(家具量販店)なのだが、内部には少なくとも10平方kmの店舗が広がっている。出口はあるのだが位置が固定されていないため、一度中に入ると脱出は困難。イケア内部では迷い込んで出られなくなった人々があちこちに村を作って暮らしている様子。さらに「イケアの店員の制服を着た、人間ではない何か」の存在も多数確認されている。この店員モドキは夜(つまり閉店時間)になると店内の“客”を排除すべく凶暴化し、生存者たちを殺害して回る。日常×非日常の傑作。


●SCP-1357「子供のための遊園地」 Safe

http://ja.scp-wiki.net/scp-1357

 家族の元に送られてくる、Playlandチケット。招待された場所にあるのは小さな着ぐるみの従業員たち、不思議な超常的アトラクションなど、子供にとっては夢のような遊園地。財団エージェントのFredricksは、調査のために実娘を連れてSCP-1357へと向かうのだが…。SCP-823「恐怖のお祭り」とは別ベクトルの救いの無さが印象的な悪夢の遊園地。

 

【各支部の反則クラス3本】

 本部・日本支部以外から、メタに満ちた3本。

 

●SCP-779-KO「これは結果論的なオブジェクトです」 Unclassed

http://ja.scp-wiki.net/scp-779-ko

 韓国支部はSCP-380-KO「模擬試験を実施します。」SCP-287-KO「このSCP-287-KOを手に取る勝者は一体誰なのか?!」などインパクトの強いメタネタが多い印象。その中でも特に短い本作は、ディスカッション欄でも曝露している人が多数見受けられるほどの影響力を持つ。

 

●SCP-CN-994「みつけたよ」 Euclid

http://scp-jp.wikidot.com/deleted:scp-cn-994

 中国支部のオブジェクト。報告書内にはとある秘密が隠されているが、パソコン環境でないと見落としてしまうかも? 1人でじっくり読んでください。※2020年11月追記  元記事差し替えによりリンク先変更しました。

 

●SCP-210-FR「ウサギ」 Unclassed

http://ja.scp-wiki.net/scp-210-fr

 ウサギです。


 以上です。あと「面白そうなSCPの探しかた」を参考までに。


評価の高い記事を上から順番に読んでいく。
 面白いから評価が高い。そりゃそうだよな! 日本支部ではやはり日本支部のオブジェクトが上位に来ることが多いので、本部の高評価記事を見たい人は「評価の高い記事-EN」を参照しましょう。

 

・タグから探す。
 とにかくヤベーのが読みたいなら「keter」、ワンちゃんが好きなら「」など、タグから追っかけていくのも良いです。短編が読みたいなら、500単語以内という縛りで行われたコンテストの作品「sc2015」を。特定の要注意団体を追いかけたい時も便利。センスのイカれた異常オモチャをばらまく善意の狂人「ワンダーテインメント博士」、芸術テロリスト集団「Are We Cool Yet?」、インターネットを中心に政治ネタ・時事ネタの異常物品をばらまく「ゲーマーズ・アゲインスト・ウィード」などは比較的入りやすいんじゃないでしょうか。

 

アニヲタWiki(仮)を参照する。
 「SCP Foundation」タグで、いろいろなSCPオブジェクトや用語、人名、要注意団体などを解説している。思いっきりネタバレになっているものもあるが、「いったいこのSCPはどういう意味だったんだ」って時は理解の助けになるかもしれない。もちろん全オブジェクトは載っていないが、有名どころはけっこう押さえられている。

 

SCP財団

http://ja.scp-wiki.net/scp-series